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よくわかる介護の話

2020年10月1日

認知症は治せる?治療薬の効果や作用、薬以外の治療方法について解説

認知症は、一度発症すると完全に治すことは難しいとされています。
そのため、「治療しても意味がないのでは?」「どんな治療をするの?」と疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。
認知症を完全に治す方法や薬はありませんが、進行を遅らせたり、症状を和らげたりすることは可能です。適切な治療や対処ができれば、本人はもちろん、家族や周りの人の負担を大きく減らせるでしょう。

この記事では、以下の認知症の治療方法について分かりやすく説明します。

  • 薬物療法
  • リハビリ療法

さらに、薬物療法で用いられる薬やリハビリ療法の種類についてもお話していきます。安心して治療を受けるためにも、ぜひ最後までご覧いただき活用してくださいね。

認知症の治療方法は3つ

認知症の治療方法は下記の3つです。

薬物療法 薬で認知症の進行を抑えたり、軽減させたりする
⇒ただし、予防や根治はできない
リハビリ療法 薬以外で認知症の症状を軽減させる方法
⇒進行を抑えることはできないが、薬物療法と併せて行うと効果が高まる
外科手術
  • 慢性硬膜下血腫
  • 特発性正常圧水頭症など
上記が原因の認知症は手術によって、症状の劇的改善が見込める
※特定の病気が原因の、ごく一部の認知症が該当

ほとんどの認知症の治療は、薬物療法とリハビリ療法がメインです。症状の緩和や進行の抑制が主な目的となります。
いずれも対症療法となり、完全に治すことはできません。
しかし症状を抑えることで本人が穏やかに暮らせるだけでなく、家族や周りの人の負担軽減にもつながります。

認知症の根治が見込める治療法は、外科手術だけです。ただし認知症の原因が特定の病気であることが条件となります。このケースに該当するのは、認知症全体のわずか数パーセントです。

それでは次章より、薬物療法とリハビリ療法について詳しく掘り下げていきます。

薬物療法について

薬物療法は、薬によって認知症の進行を抑えたり、認知症特有の症状を改善させたりするものです。脳の機能低下を遅らせる効果も期待できます。
完治させることはできませんが、本人や家族などのQOL(生活の質)※を高めるために必要です。

薬物療法は認知症の症状の分類によって、以下の2つがあります。

(1)中核症状に対する治療薬
(2)行動・心理症状に対する治療薬

 
次項より、それぞれについて詳しくお話していきます。

※QOL(生活の質)とは?
QOLはQuality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)の略称。日本では「生活の質」とも訳される。病気などの症状や治療の副作用などで、これまでのような生活が送れなくなっても、「充実した生活」「自分らしく生きる」を目指す考え方。

(1)中核症状に対する治療薬の種類と主な作用

認知症の人に必ずあらわれる症状が中核症状です。中核症状には、「記憶障害、理解・判断力の障害、実行機能障害、見当識障害」があります。

中核症状(認知症の人に必ずあらわれる症状)
記憶障害
  • 過去の出来事を思い出せない
  • 新しいことを覚えられない
理解・判断力の障害
  • 理解するスピードが遅くなる
  • 家電やATMなどが使えなくなる
実行機能障害
  • 計画できない
  • 段取りを立てた行動ができない
見当識障害
  • 年月日や時間、場所が分からない
  • よく知っている場所で迷う

中核症状に使われるのは、次の4種類の薬です。

適応 商品名(主成分) 主な作用 副作用
経度~重度 アリセプト
(ドネペジル塩酸塩)
  • 脳の働きを活性化
  • 意欲を高める
※比較的少ないとされている
ただし、下痢、嘔吐、食欲不振、腹痛などがある可能性も
軽度~中等度 レミニール
(ガランタミン臭化水素酸塩)
  • アリセプトと同様の効果あり
  • 記憶力や集中力などの改善
下痢、嘔吐、食欲不振、腹痛など
軽度~中等度 リバスタッチ、イクセロン
(リバスチグミン)
  • アリセプトと同様の効果あり
  • 貼り薬(飲み薬が服用しにくい人にも使える)
皮膚の赤み、かゆみ、かぶれ、食欲不振など
中等度~重度 メマリー
(メマンチン塩酸塩)
  • 神経伝達をコントロールする
  • 興奮や攻撃性などを抑える
  • 上記3種の薬との併用が可能
めまい、眠気、頭痛、便秘、高血圧など

これらの薬は、中核症状の軽度~重度の症状に対して、脳の働きを活性化し、意欲を高める役割を担います。認知症の進行を緩やかにする効果が期待できます。

(2)行動・心理症状に対する治療薬の種類と主な作用

認知症の行動・心理症状とは、徘徊、妄想、幻想などです。周囲の対応や、元々の性格、生活環境などの要因が大きく作用する症状になります。

行動・心理症状(周囲の対応などの環境要因が大きく作用する症状)
徘徊
  • 家の中や屋外であてもなく歩き回る
妄想
  • 周囲の人間が自分のものを盗ったと思い込む
  • 自分は家族にとって邪魔な存在だと思い込む
幻覚
  • 存在しないはずのものが見える
粗暴な行為
  • 暴言を吐く
  • 物を壊す、暴力をふるう
せん妄
  • 意識障害により一時的に判断力や思考力が低下する
抑うつ
  • 意欲や気力が低下する
  • 悲観的になる
人格変化
  • 以前の性格とは別人のように変化する
不潔行為
  • 失禁する
  • 放尿や放便をする

行動・心理症状の改善には、それぞれの症状に合わせた薬を使います。

行動・心理症状で用いられる主な治療薬の種類や作用、副作用は以下の通りです。
 

種類 商品名(主成分) 主な作用 副作用・注意点
抗精神病薬

リスパダールなど
(リスペリドン)

  • 幻覚、妄想、興奮などの抑制
  • 転倒しやすくなる
  • 血糖値があがりやすくなる
  • 糖尿病の人には使えない
抗不安薬 リーゼなど
(クロチアゼパム)
  • 不安感の緩和
  • 緊張などを和らげる
  • 吐き気、食欲不振、便秘、幻覚、妄想など
脳循環・代謝改善薬 サアミオンなど
(ニセルゴリン)
  • 脳梗塞の後遺症による意欲低下を改善
  • 食欲不振、下痢、便秘など
  • 12週服用しても効果がなければ中止
漢方薬 抑肝散
  • 幻覚や興奮の抑制
  • 攻撃性を抑える
  • 不眠の改善
  • 徘徊の改善
  • 消化器症状、過鎮静、低カリウム血症(筋力低下、不整脈など)ほか

いずれの薬も副作用が見られた時は、医師に相談して薬の減量や中止を考える必要があります。また、服薬については、時間と量を守るために家族や周囲の支援が不可欠です。

リハビリ療法の種類と期待できる効果

リハビリ療法とは、五感を刺激し、脳の神経細胞に働きかけることで、脳を活性化させる治療方法です。
主なリハビリ療法は次の通りです。
 

回想療法 アメリカ発の心理療法。昔の懐かしい話をして、脳の刺激を促す。精神的な安定にもつながる。
音楽療法 楽器演奏や歌などで、情緒面、聴覚への刺激を促す。多くの施設で行われている。
運動療法 適度な運動は病気の進行を遅らせる効果があるため、多くの施設で実施されている。激しい運動ではなく、ウォーキングなどの軽い運動が最適。
アニマルセラピー 動物と触れ合うことが癒しにつながる。重度で意欲が低下している人に効果的。

リハビリ療法は、薬物治療と併せて行うと効果が高まるとされています。しかし、本人が嫌がる場合に無理強いするのは好ましくありません。本人が興味を持つことを続けるのが、脳の活性化につながります。

まとめ

認知症の治療方法は、薬物療法とリハビリ療法がメインであることがお分かりいただけたかと思います。

どちらの治療法も、本人や家族の日常を安定させるためには必要です。もし薬物療法で症状の変化が見られなくても、「症状の進行は抑えられている」と考えられます。
服用を中止することで症状が急に悪化することがありますから、自己判断は禁物です。必ず、主治医と相談しながら治療を進めていきましょう。

参考:
認知症の9大法則 50症状と対応策(著者:杉山孝博)
認知症診療ガイドライン2017(第3章 治療)|一般社団法人 日本神経学会