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高齢者を笑顔にする「福祉ネイル」|メリットや認知症への効果を解説

福祉ネイルは、高齢者のQOL(生活の質)を上げる取り組みの1つとして注目を集めている美容サービスです。指先や爪がきれいになると、日常生活が彩り豊かになりますよね。福祉ネイルは認知症の予防や改善効果も期待されていることから、レクリエーションやイベントとして取り入れる高齢者施設もあります。

この記事では、福祉ネイルの具体的な施術内容やメリット、認知症への効果について解説します。さらに、老人ホームで行われた福祉ネイルの様子も紹介しますので、利用時のイメージ作りに役立てていただけると幸いです。

福祉ネイルとは

福祉ネイルは、「オシャレを楽しみたいけれど、ネイルサロンに行くのが難しい」という高齢者や障がい・病気を抱えた人のためのサービスです。ネイルを行うネイリストが、利用者の自宅や入居している施設などへ訪問して施術を行います。

ネイルサロンでカラーリングの施術を受けると1時間ほどかかりますが、福祉ネイルは10〜20分の短時間で行われます。長時間の施術は高齢者に負担をかける恐れがあるからです。福祉ネイルでは、速乾性の高いネイル製品を使用したり、施術をシンプルにすることで、施術時間を短縮しています。

基本的にネイリストは、利用者と会話をしながら施術を行います。利用者の健康状態を確認しながら施術するので、体力に自信がない高齢者も安心して利用できるでしょう。

また、詳しくは後述しますが、福祉ネイルには単に爪をきれいにするだけでなく、心を癒し元気づける目的もあります。

【高齢者向け】福祉ネイルの施術内容

福祉ネイルは、高齢者の安全と健康面に配慮して、短時間で施術できるサービスが基本です。以下の表に、受けられる施術と受けられない施術をまとめました。

受けられる施術
  • ハンドマッサージ
  • ハンドケア
  • 爪磨き
  • カラーリング
  • ペイントアート
受けられない施術
  • ジェルネイル
  • 細かいパーツを使ったネイル

福祉ネイルの主な施術内容は、カラーリングとペイントアートです。カラーリングはネイル(マニキュア)を爪に塗り、色付けることを指します。ペイントアートは爪に色を塗った後に絵や模様を描くことです。

福祉ネイルでは、ハンドマッサージ、爪磨きなどのハンドケアのみの施術も可能です。そのため、ネイルに抵抗がある人にも幅広く対応できます。

ただし、福祉ネイルでは時間がかかる施術(ジェルネイルや複雑なアートなど)は原則として行われません。誤飲や誤嚥のリスクを避けるため、細かいパーツ(ビーズやラインストーンなど)を用いずに施術を行います。

福祉ネイルでは、ハンドケアだけでなく、施術中のコミュニケーションも大切にしています。ネイリストは、回想法(かいそうほう)を取り入れてリラックスした雰囲気を作ります。回想法は、過去の出来事や思い出を振り返り、その体験を共有することで、コミュニケーションを深めるものです。特に高齢者や認知症の人に用いられ、記憶や感情を呼び覚まし、心の安定や安らぎにつながるとされています。

福祉ネイルで期待できる4つのメリット

福祉ネイルには、「手指がきれいになる」「移動せずに施術が受けられる」という身体的なメリットに加え、精神面にも良い影響があります。

福祉ネイルで期待できる4つのメリット

  • 外見の変化が自信を育む
  • 「大切にされている」実感を得られる
  • さまざまな記憶がよみがえりやすい
  • コミュニケーションの促進につながる

順番に解説していきます。

外見の変化が自信を育む

福祉ネイルでケアを受けると、指先がきれいになりますよね。美しく整った手指を目の当たりにすると、嬉しさを感じることでしょう。ハンドケアだけでも、手指に清潔感が増します。「手指がきれいになった」という外見の変化は、心の満足感や自信につながります。

「大切にされている」実感を得られる

福祉ネイルを受けると、利用者は「自分は大切にされている」と感じやすくなります。利用者にとって大切な身体部分である手指を丁寧にケアしてもらえるからです。

福祉ネイル施術中、利用者とネイリストは手を握り、目を見て会話しますよね。すると、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が分泌され、幸福感が得られやすくなります。そのため、丁寧なケアはリラクゼーションや安心感をもたらすとされています。

さまざまな記憶がよみがえりやすい

ネイルの効果は一定期間持続するため、施術を受けた記憶がよみがえりやすいのもメリットとして挙げられます。特に手指は鏡などの道具を使わなくても、ふとした時に視界に入りますよね。ネイルが持続している間、自分の爪を見て、「ネイルをしてもらった」「きれいだな」と感じたり、施術を受けたときの楽しい記憶を思い出したりすることができます。

特に認知症の人にとっては、こうした視覚的な刺激が記憶の呼び起こしに役立つとされています。

コミュニケーションの促進につながる

福祉ネイルはマンツーマンの施術のため、ネイリストと利用者の信頼関係が築きやすいのが特徴です。ネイリストは利用者がリラックスできるように、「好きな色は何ですか?」など答えやすい質問を通じてコミュニケーションを図ります。先述した回想法を取り入れると、普段は会話に積極的でない人も、施術中に自然に話すことが増えるようです。

施術後は、スタッフや周りの人から「素敵になりましたね」「きれいですね」といった声が多く寄せられ、褒められる機会も増えます。周りの人とのコミュニケーションが生まれるきっかけにもなるのも、福祉ネイルのメリットです。

福祉ネイルが認知症ケアにつながるとされる理由

福祉ネイルは、認知症ケアにつながる効果が期待されています。その理由の1つとして挙げられるのが、「ユマニチュードとの親和性」です。

ユマニチュードは「見る・話す・触れる・立つ」の4つの動作を通じて、認知症の方に「あなたは大切な存在であること」を伝えるケア方法です。福祉ネイルでも同様のアプローチを用いることで、認知症ケアの効果が期待できます。

ユマニチュードについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

心をつかむ認知症ケア技法「ユマニチュード」とは?概念と基本技術|豆知識・コラム

老人ホームで行われた福祉ネイルを見てみましょう!

福祉ネイルについて分かると、「どのように行われるのだろう」と気になりますよね。
ここでは、「介護付有料老人ホーム みんなの家・中央区円阿弥」で行われたネイルサロンの様子を紹介します。

「みんなの家・中央区円阿弥」では、ネイルが得意なスタッフのMさんを中心に、入居者のみなさんの指を丁寧にケアするネイルサロンを実施しました。

「何色がいいですか?」と聞かれて、入居者のMさんが選んだのは赤色です。
とてもきれいな赤色に仕上がりました。指先がパッと明るくなると、気持ちも晴れやかになりますね。

「あんまり派手じゃないやつがいいわね〜」と入居者Aさんが初めに選んだのは、薄いピンク色。

しかし、実際に塗ってみると、「ちょっと派手ねえ」と思っていたよりも色が濃かったようです。すぐにスタッフが薄い水色に塗り直します。

完成したネイルを見せてニッコリ笑顔のAさん。イメージ通りの色に仕上がると嬉しいですね。

「あたしもやるよー!」と順番待ちをしていた入居者Aさんが選んだのは黄色のネイルです。指先に明るい色がつくと、見ているだけで元気が出てきそうですね。
入居者のМさんが選んだカラーは薄いシルバー。指輪との相性も抜群です。指先がキラキラと輝き、心まで明るくしてくれますね。

おしゃれを楽しむことは脳の活性化につながる

福祉ネイルの施術は、施術された本人だけでなく、周囲の人々も笑顔にするパワーがあります。福祉ネイルはネイリストとのコミュニケーションを通じて、考える力も鍛えられ、脳の活性化につながることが期待されます。

福祉ネイルは高齢者に人気のレクリエーション・イベントの1つです。今後、福祉ネイルを実施する高齢者施設が増えることも予想されます。施設を選ぶときの参考にしてもよいかもしれませんね。