認知症疾患医療センターとは?
種類や受診方法などを分かりやすく解説
認知症は、早期発見とその後の適切な対応で、その進行を遅らせることができます。
しかし「認知症の検査や相談はどこでできるの?」とお悩みの人もいらっしゃることでしょう。
今回の記事では認知症に関する相談や検査が可能な「認知症疾患医療センター」について解説していきます。一見、ハードルが高そうな名称ではありますが、認知症の人とその家族をサポートするところです。気になることがあれば相談をして、認知症の早期発見につなげましょう。
認知症疾患医療センターの基礎知識
まずは「認知症疾患医療センターがどのような場所なのか」を理解していきましょう。
ここでは認知症疾患医療センターの基礎知識を分かりやすく解説します。
認知症疾患医療センターとは?
「認知症疾患医療センター」とは、認知症に関する詳しい診断や症状への対応、相談などを行う認知症専門の医療機関です。
都道府県や政令指定都市が指定する病院に設置され、全国に477ヵ所あります(令和2年2月時点)。認知症疾患医療センターと認定されるのは、検査機器や入院設備などの条件を満たした医療機関だけです。地域の病院(かかりつけ医)や介護施設、行政などと連携して認知症の治療やケアを行います。
認知症疾患医療センターは3種類
認知症疾患医療センターは医療機関の規模や人員配置などにより、次の3つに分類されます。
- 基幹型:大規模な医療機関(総合病院)
- 地域型:精神科のある病院など
- 連携型:診療所や小規模な病院
基幹型 | 地域型 | 連携型 | ||
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設置医療機関 | 病院(総合病院) | 病院(単科精神科病院等) | 診療所・病院 | |
基本的活動圏域 | 都道府県圏域 | 二次医療圏域 | ||
専門的医療機 能 | 鑑別診断等 | 認知症の鑑別診断及び専門医療相談 | ||
人員配置 |
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検査体制 (※他の医療機関との連 携確保対応で可) |
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BPSD・身体合併症対応 | 空床を確保 | 急性期入院治療を行える医療機関との連携体制を確保 | ||
医療相談室の設置 | 必須 | ー |
出典:認知症施策推進大綱
認知症疾患医療センターの主な役割
認知症疾患医療センターの主な役割は以下のとおりです。
- 認知症の専門医療
- 認知症に関する相談窓口
- 地域との連携
- 啓蒙活動や人材育成
認知症疾患医療センターでは認知症の治療だけでなく、認知症にまつわる正しい知識の普及活動も行っています。
多くの病院で認知症の早期発見・対応ができるように、知識の不足している医師や看護師に研修を行います。より多くの人が認知症について正しく知ることも重要です。認知症の知見を持つ人が増えるほど、認知症の人やその家族が安心して暮らせるようになります。
認知症疾患医療センターでは何ができるの?
認知症疾患医療センターでは、次の5つのことができます。
▼認知症疾患医療センターでできる5つのこと
- 専門医療相談
- 鑑別診断
- 治療方針の決定
- 認知症の周辺症状や合併症への対応
- 関係機関との連携
1つずつ確認していきましょう。
専門医療相談
認知症の専門知識を持つスタッフに電話や面接で相談ができます。
「気になる症状がある」「認知症の人への介護方法」など、認知症にまつわるさまざまな疑問や相談に応じてくれます。
専門医療相談は本人や家族に限らず、介護施設や介護サービスにかかわる人なども利用できるサービスです。
鑑別診断
心理検査や血液検査などをもとに、認知症の専門医が鑑別診断を行います。
認知症の鑑別診断では主に以下の3つを見極めます。
- 認知症かどうか
- (認知症の場合)原因となっている疾患
- (認知症の場合)重症度
治療方針の決定
鑑別診断の結果にもとづいて、治療方針をまとめていきます。
「どのように生活したいか」を本人や家族にヒアリングし、今後の生活について相談しながら治療方針を決めます。
認知症の周辺症状や身体合併症への対応
認知症の周辺症状(幻覚や徘徊、睡眠障害など)が強いと、通院または入院での治療となります。
認知症になると自律神経の調節機能が低下することから、身体に疾病を抱えやすくなります。低血圧や便秘、免疫力低下などの身体合併症の症状があれば、必要な治療もあわせて行います。
関係機関との連携
認知症疾患医療センターでは、本人の状態に応じて関係機関との連携をはかります。
症状が軽い場合は、鑑別診断の結果をかかりつけ医に送付して、以後の治療・対応をかかりつけ医に任せることもあります。
反対に症状が重い場合は、対応可能な治療機関や入所施設を紹介することもあります。
本人やその家族にとって、医療や介護を受けやすく、生活しやすい環境を作るよう体制を整えます。
認知症疾患医療センターを受診する方法
最後に認知症疾患医療センターを受診する方法をご紹介します。
1 かかりつけ医に紹介してもらう
「認知症かもしれない」と気になる症状があったら、まずはかかりつけ医に相談しましょう。普段から診てもらっているかかりつけ医ですから、本人の変化に気づきやすく、また家族とのコミュニケーションもスムーズに図れます。
もし仮に、かかりつけ医が「認知症とは思えない」と判断しても、本人や家族が気になるようなら認知症疾患医療センターへの紹介をお願いするといいでしょう。専門的な検査で、認知症が明らかになる可能性もあります。
2 地域包括支援センターなどに問い合わせる
特にかかりつけの病院がない場合は、地域包括支援センターや福祉事務所に問い合わせをしましょう。居住エリアに近い認知症疾患医療センターを紹介してもらえます。
全国の地域包括支援センターはこちらの「全国の地域包括支援センターの一覧」よりご確認下さい。
3 認知症疾患医療センターに直接問い合わせる
認知症疾患医療センターに直接問い合わせる方法もあります。
ほとんどの認知症疾患医療センターには相談窓口がありますから、まずは電話で問い合わせるといいでしょう。
しかし、中には「紹介状がないと診察できない」とか「紹介状がないと初診料または特別費用がかかる」ケースもあります。
認知症かな?と思ったら早めに相談を
今回ご紹介した認知症疾患医療センターは「認知症かも?」と感じた人や家族が利用できる医療機関です。症状が軽い段階で適切な治療を行うと、認知症の症状の進行を遅くすることができます。
認知症は早期の対応でその後の生活が大きく変わるものです。
「加齢によるただの物忘れかもしれないから」「認知症ではないと思うから」などとためらわずに、気になる症状があればまずは相談してみましょう。それはかかりつけ医でもいいですし、今回ご紹介した認知症疾患医療センターの専門医療相談を利用するのもおすすめです。