認知症とは?
「もの忘れ」との違いや目安となる症状をご紹介
「おばあちゃんのもの忘れが激しくなった。もしかして認知症?」
「おじいちゃんの言動がいつもと違うけれど、このまま放っておいて大丈夫?」
あなたは今このような疑問をお持ちでしょうか。
認知症の症状は個人差が大きいだけでなく、日によって症状の出方はさまざま。特に認知症の初期は、いつものように喜怒哀楽があり、いつものように会話もできますから、見極めが非常に困難です。気がついた時には「かなり症状が進行していた」ということも少なくありません。
認知症は放っておくと症状がどんどん進行してしまうため、早期発見が非常に大切です。
この記事では、認知症の基本的な知識から「もの忘れ」との違い、早期発見の目安までご紹介します。病院への誘導のコツも併せてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧いただき活用してくださいね。
【認知症の基礎知識】そもそも認知症とは?
高齢者のおよそ7人に1人が該当するとされる認知症は、誰にでも起こりうる身近なもの。認知症特有の症状によって、家族が疲弊してしまうことも少なくありません。
しかし、認知症についての正しい知識があれば、適切な対処が可能になり、家族や本人の負担を減らすことができます。まずは、認知症と混同しやすい「もの忘れ」との違いを明らかにしていきましょう。
【違いを比較】認知症と「もの忘れ」はどう違うの?
「人の名前が思い出せない」「昨夜、何を食べたっけ?」という経験は、誰にでも覚えがありますよね。
そのようなもの忘れと認知症の違いをわかりやすく言うと、以下のようになります。
- 認知症は、朝ごはんを「食べたこと自体」を忘れる
- もの忘れは、朝ごはんで「食べた物」を忘れる
一見似ているようですが、実際は全然違いますよね。
2つの違いをさらに詳しく下記にまとめましたので、気になる症状で比較してみてください。
認知症 | 加齢によるもの忘れ | |
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原因 | 病気によって脳の細胞がダメージを受けることによる | 加齢・老化 |
どんなことを忘れるの? | 経験した出来事
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一般的な知識や経験の一部分など
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場所や時間 | 見当がつかない | 見当がつく |
忘れたことの自覚 | 自覚なし | 自覚あり |
症状の進行 | 進行する | あまり進行しない |
日常生活への影響 | 支障がある | 支障がない |
「認知症=病気」ではない!認知症は症状の呼び名
認知症とは、脳細胞の変質や死滅などで起こる症状の呼び名です。認知症の症状を引き起こす主な原因は、脳に障害を及ぼす病気やケガ。このことから「認知症=病気」と認識する人が多いのかもしれませんね。
認知症は次の2つの症状が当てはまるケースを指します。
認知症の症状のケース
- 認知機能(生活する上で重要な理解・判断・記憶などの機能)が低下し、日常生活に支障がある
- その状態が半年間継続している
症状のあらわれ方や進行スピードは、認知症の原因によって異なります。
最も多い原因は全体の65%以上を占めるアルツハイマー病。次いで、脳血管性認知症、レビー小体型認知症と続きます。
残念ながら、これらを含む認知症の90%には、根治が期待できる治療法・治療薬はありません。手術で劇的に改善するケースは認知症全体の数%程度。ごく少数の原因の場合に限られています。
根治が難しいもの |
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根治が期待できるもの |
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認知症の症状
認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状」の2つに分けられます。
「中核症状」は、脳の病変により引き起こされる症状で、認知症が進行するにつれて必ずあらわれるものです。
中核症状(認知症の人に必ずあらわれる症状) | |
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記憶障害 |
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理解・判断力の障害 |
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実行機能障害 |
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見当識障害 |
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もう1つの「行動・心理症状」は、本人の性格や環境、周囲との関わり方などが絡み合って起こるものです。したがって、症状のあらわれ方や度合いに大きな個人差があります。
行動・心理症状(周囲の対応などの環境要因が大きく作用する症状) | |
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徘徊 |
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妄想 |
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幻覚 |
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暴力行為 |
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せん妄 |
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抑うつ |
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人格変化 |
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不潔行為 |
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チェックリストですぐわかる!認知症の早期発見の目安
本章ではさらに踏み込んで「日常生活の中で見られる認知症を疑うべき症状」についてお話していきます。
以下でご紹介するのは、「公益社団法人 認知症の人家族の会」が作成した認知症の早期発見の目安となる言動のチェックリストです。
医学的な診断基準ではありませんが、同会員の経験をまとめたものなので、とても参考になります。暮らしの中での目安としてチェックしてみてくださいね。
もの忘れがひどい |
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判断力・理解力が衰える |
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時間・場所がわからない |
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人柄が変わる |
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不安感が強い |
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意欲がなくなる |
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病院を受診させたい!上手に誘導するポイントは?
認知症の診断・治療には、医療機関の受診が不可欠。とはいえ「自分は病気ではない」と思う人ほど受診を嫌がりますから、医療機関に連れて行くのは大変です。
本章では、認知症の疑いのある人を上手に医療機関へ誘導するポイントを3つご紹介します。
①自尊心を傷つけないような口実を作る
1つ目のポイントは、本人の自尊心を傷つけないような口実を作って病院へ連れ出すことです。例えば、
- 65歳以上の人が受ける検査がある
- 健康診断のお知らせが届いた
- 私の健康診断に付き合ってほしい
②かかりつけ医からすすめてもらう
2つ目のポイントは、持病や頭痛などの体調不良でかかりつけ医を受診した際に、認知症の検査をすすめてもらう方法です。この場合も受診前に気になる症状を伝え、「先生から検査を受けるように言ってください」と依頼しておきます。
信頼関係があるかかりつけ医からすすめられると、「先生が言うなら受けてみようかな」と検査に応じる人も多いようです。
③訪問診療を利用する
病院へ行くのを断固拒否する場合は、訪問診療を行っている医療機関を探してみましょう。
「〇歳以上の人を対象に訪問の健康診断を市(居住地域名)が行っている」と説明すると、すんなり受け入れる人も。こちらも、事前に病院に相談して、協力をお願いしておくとスムーズです。
まとめ
この記事では、認知症の症状や早期発見に役立つ情報をまとめてご紹介しました。
本文でもお話しましたが、認知症の症状は個人差があります。たとえ症状が同じでも、一人ひとり程度が異なるものです。そのため、介護やお世話をする人が「これくらいならたいしたことないから大丈夫」「まだ自分で対応できるから」と、つい頑張ってしまいやすいので気をつけましょう。
認知症の疑いを抱えたまま向き合うのは、本人にとっても介護者にとっても大変です。
もし「認知症かもしれない」と感じたら、医療機関の受診や居住地域の地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
他にも、当記事で紹介した「公益社団法人 認知症の人と家族の会」では、認知症について無料で電話相談も受け付けています。困ったときには、利用を検討してもよいでしょう。