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認知症の方との接し方・対応「基本の3ない」と「10のポイント」

認知症の方への対応・接し方は、ご本人やご家族にとってとても大切です。穏やかなコミュニケーションを心がけ、安心できる環境を作ることで、より良い日々を送ることができます。この記事では、認知症の人に対応する時の心得や、良い接し方、ケアのポイントについてお話していきます。

認知症の症状は、個性と同じように人それぞれですが、それでも症状に共通するポイントはあります。この記事では、その基礎となる部分を分かりやすく説明していきます。
最後までお読みいただくことで、どのような症状に対しても「最善な対応」を考え、実践することができるようになるでしょう。

認知症の人への対応|基本は「3ない」

まずは、認知症の人への対応で基本となる部分を見ていきましょう

認知症の人と接する時の心得は「3ない」

認知症の人と接する時は、次の3つの「ない」を心得ましょう。

  1. 驚かせない
  2. 急がせない
  3. 自尊心を傷つけない

出典:認知症サポーター養成講座標準テキスト(認知症サポーターキャラバン発行)

認知症の人は、記憶や物事を判断する「認知機能」が低下しています。そのため、何をするのにも「考える時間」が必要になり、どうしても動作が遅くなるのです。
ここでポイントとなるのが、「できない」のではなく「時間をかければできることもある」ということ。認知機能が低下していてもその時に抱いた感情はこれまで通り残っていますから、「早くして!」と急かしたり、イライラした態度で対応するのはやめましょう。
「どうしてできないの?」「やってあげるから!」などと、自尊心を傷つけるような対応は、信頼関係に影響します。信頼関係を損なうと、本人は心を閉ざし、さらに症状が進む可能性があるので気をつけましょう。

認知機能とは?

判断力・理解力・記憶力・計算力・言語能力などの、人間が持つ知的な機能の総称。
社会生活を送る上で重要な能力。

認知症の方とのコミュニケーションのポイント6つ

  1. 共感する
  2. 相手のペースに合わせる
  3. 否定的な言葉は避ける
  4. 具体的な言葉を使う
  5. 余裕を持って笑顔で接する
  6. しっかり話を聞く

共感する

共感の気持ちを伝えましょう。「大変ですね」「つらいですね」など、相手の気持ちを理解していることを示す言葉が効果的です。共感の言葉をかけることで、相手は心の安定を得られ、信頼関係が築かれ、そして尊厳が守られます。

相手のペースに合わせる

焦らさずに、ゆっくりと丁寧に話しかけましょう。相手の反応を見ながら、話すスピードや内容を調整しましょう。より円滑なコミュニケーションが可能になります。

否定的な言葉は避ける

「そんなことないよ」や「それは違う」など、否定的な言葉は避けましょう。相手の言動を否定すると、不安や混乱を招く可能性があります。「そんなことないよ」のかわりに、「それは面白い考えね」「その気持ちもよくわかるよ」「なるほど、そういう考え方もあるね」といったように、感情的な対立を起こさない、肯定的な声がけを心がけましょう。

具体的な言葉を使う

抽象的な言葉ではなく、具体的な言葉を使って説明しましょう。たとえば、「後でしましょう」ではなく、「お昼ごはんの後、一緒に散歩に行きましょう」のように具体的な言葉で具体的な内容を伝えることで、相手は理解しやすくなります。

余裕を持って笑顔で接する

笑顔は、相手をリラックスさせ、安心感を与えます。なるべく笑顔で接するように心がけましょう。焦りや不安、苛立ちなどのマイナスの感情は、相手に伝わりやすいものです。相手を動揺させないためにも、余裕を持って、自然な笑顔で接するように心がけましょう。

しっかり話を聞く

私たちは、自分の話をしっかり聞いてくれる相手に対して信頼感を持ちますよね。これは認知症の人も同じです。自分が話している時に途中で遮られたり、急かされたりするのは誰だって嫌なもの。認知症の人に対しても、急かさずに耳を傾けることが重要です。

話をしっかり聞いている証拠として、相手が話した言葉を使って確認していくと、認知症の人にも「自分は受け入れられている」と伝わりやすいでしょう。

認知症ケア・認知症対応におけるポイント4つ

認知症の方との接し方、コミュニケーションの取り方のポイントについてお話しましたが、次に認知症ケア・認知症対応に関するポイントをお伝えします。認知症ケアとは、認知症の方の生活全般を支援すること。次の4つを基本として、認知症の方の尊厳や個性を大切にしながら、安全な生活をおくれるようサポートしていきましょう。

個性を尊重する

同じ認知症の方でも、症状や性格はさまざまです。
一人ひとりの個性に合わせたケアをすることが大切です。

安全な環境を作る

転倒や迷子などの危険を防止するため、安全な環境づくりを心がけましょう。
手すりを取り付けたり、滑りにくい床材を使用したりするなどの工夫が有効です。

チームで連携する

家族、介護職員、医療関係者など、関係者全員が協力してケアを行うことが大切です。

専門家のサポートを受ける

認知症のケアについては、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

こんな時はどうしたらいい?困った言動の対応策

最後に「どうしたらいい?」と困ってしまう言動の対応策をいくつかご紹介します。

やるべきことを忘れたり、いつも何かを探したりする

やるべきことを忘れたり、何か探していたりするようだったら、まずは「どうしたの?」などと優しく声をかけ、返事を待ちます。
「朝ごはんを食べていない」「財布がない」などと理由を話してくれたら、「そうですか」と受け止めて、一緒に手伝う姿勢を見せましょう。

理由を思い出せなかったり、言いたがらない場合には、無理に聞き出そうとせずに見守ります。

会話のつじつまが合わない

つじつまが合わなくても、話をよく聞いてあげることが重要です。急かしたり、質問したりするのではなく、あなたは「聞き役」に徹しましょう。適度に相づちを打つことで、相手は「自分の話をきちんと聞いてくれている」と考えます。あなたが発言する時には相手の理解スピードに合わせて、ゆっくりした話し方を心がけましょう。

急に泣いたり、怒ったりと感情の起伏が激しい

認知症になると感情の抑制がきかなくなり、喜怒哀楽の表現が大きくなります。深夜や早朝に大声で泣きわめくなど、他人に迷惑になる時以外は、思う存分、感情表現をさせましょう。

泣いている時にはそっと寄り添う姿勢を見せ、怒っている時には演技でも「ごめんなさい」と謝ると、興奮がおさまりやすくなります。

身近な人を責めたり、暴言を吐いたりする

認知症の症状は、身近な人に対して強く出る傾向があります。介護に  いちばん熱心な人に暴言を吐いたり、ワガママを言うのは信頼の証です。
このことを理解していても、実際にひどい言葉や態度をとられると、つらいものがありますよね。
ひと通り話をさせ、興奮が落ち着いてきたら「もう夕刊きたかな?」「今日の夕飯は何が食べたい?」などと話題を変えるのが最も良い対応です。注意がそれると、怒りの感情がおさまることが多いので、上手にやり過ごしましょう。正論で言い返したり、無視したりすると、相手は意固地になりやすいのでやめましょう。

まとめ

この記事では認知症の人への対応についてお話しました。
認知症の人は、認知機能が衰えていても感情面はとても繊細です。
「本人が何を求めているのか」を考え、本人がやりたいことができるように支援すれば、安心して暮らすことができるでしょう。

大切なのは、認知症の人が穏やかに暮らせる環境を整えることです。今回ご紹介した心得や対応のポイントを実践してみてくださいね。

参考:
認知症サポーター養成講座標準テキスト(認知症サポーターキャラバン発行)
認知症の9大法則 50症状と対応策(著者:杉山孝博)