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要介護認定の申請から認定までの流れを徹底解説

介護保険のサービスを受けるためには、要介護認定の申請が必要です。
中には、「まだ必要ない」「面倒だから」と申請を嫌がる人もいらっしゃるでしょう。
しかし、介護サービスを利用せずに頑張り続けると、結果的に家族や本人に大きな負担がかかってしまうことにもなりかねません。

これまでと変わらない暮らしを長く続けるためには、利用できるサービスを上手に活用することが必要です。この記事では、要介護認定の申請について詳しく解説していきます。

要介護認定の申請方法

要介護認定の申請は、市町村窓口や地域包括支援センターで受け付けています。
要介護認定を受けるべきか迷ったら、地域包括支援センターに相談するといいでしょう。
ここでは、申請方法について詳しく解説していきます。

本人と家族以外で申請が可能な人

要介護認定の申請ができるのは、基本的には本人とその家族です。
ただし、本人の来所が難しい場合は、代理人が申請することもできます。
代理で申請できる人
  • 親族
  • 地域包括支援センターの職員
  • 居宅介護支援事業者
  • 介護保険施設の職員

申請に必要なもの

要介護認定の申請に必要なものは、申請者の年齢によって異なります。
65歳以上
<第1号被保険者>
介護保険被保険者証
40~64歳
<第2号被保険者>
健康保険証
その他、申請に必要なものは以下のとおりです。
申請に必要なもの
  1. 要介護・要支援認定申請書
  2. 介護保険被保険者証または健康保険証
  3. マイナンバーが確認できるもの
  4. 主治医の診察券
    (医療機関名や主治医の名前、住所が分かるもの)
本人や家族以外が申請する場合は、さらに3つのものが必要になります。
本人・家族以外が申請する場合
  1. 委任状などの代理権が確認できるもの
  2. 印鑑
  3. 代理人の身元が確認できるもの
申請書は市町村窓口でもらえるほか、インターネットでダウンロード可能です。主治医や医療機関の情報などを記載する箇所があるので、事前に記入しておくとスムーズに手続きをすることができます。

要介護認定の流れ

1.介護認定調査員による訪問認定調査

要介護認定を申請すると、「介護がどれくらい必要なのか」を調べるための認定調査が始まります。

通常、認定の申請から10日前後で面接調査が行われます。市町村の職員が申請者本人の自宅を訪問するのが基本です。訪問調査は以下の3つについて、約1時間かけて行われます。

①概況調査 現在受けているサービス状況や頻度
家族の状況など
②基本調査 身体や生活機能などの74項目 ※詳細は下記の表を参照
③特記事項 特別に配慮すべき点
認定調査票(基本調査)の詳細
身体機能・起居動作 麻痺の有無
寝返り
座位保持
歩行や立ち上がり
視力や聴力
生活機能 移動
食事摂取
排尿や排便
衣類の着脱
外出頻度
認知機能 意志の伝達
生年月日や年齢が言えるか
今自分がいる場所を理解しているか
徘徊について
精神・行動障害 被害的になる
感情が不安定
昼夜の逆転
物忘れ
社会生活への適応 薬の内服
金銭の管理
買い物
特別な医療 過去14日間に受けた医療についての情報
(継続して実施されている医療行為のみ)

参考:要介護認定 認定調査員テキスト 2009(改訂版)を基に筆者作成

具体的にどのようなことをチェックするのかについては、認定調査票(概況調査)を参考にしてください。

訪問調査は必ず同席しましょう

認定調査の日時は、調査員と調整が可能です。
仕事を休んだり、予定を合わせたりして、必ず同席するようにしましょう。
なぜなら、訪問調査では、申請者本人への聞き取りや動作確認だけでなく、介護者への確認事項もあります。本人が返答できない場合、代弁が必要になりますから、必ず同席しましょう。

訪問調査で家族が準備すること

認定調査の際、申請者(本人)が「いつもよりも動作や会話ができる」のは、実はよくある話です。
家族以外のお客様を前に張り切ってがんばった結果、正しい認定が受けられないのは困りますよね。

申請者の状態を正しく把握してもらうためには、普段の様子をあらかじめメモにまとめておくことをおすすめします。

メモに書いておくといいこと
  • 病歴
  • 介護となった状況や現状
  • 本人ができること
  • 介助していること
  • 困った行動や心配な点
メモはA4用紙1枚程度にまとめ、調査員に「念のため、現状をメモにまとめたので参考にしてください」と渡すといいでしょう。

2.主治医意見書作成

認定調査と同様に、認定に影響をおよぼすのが主治医の意見書です。
申請書に記載した主治医に、自治体が意見書の作成を依頼します。主治医は医学的観点から、介護の必要性について記載します。申請者本人や家族は、主治医が作成した意見書を見ることはできません。

主治医がいない人は自治体から紹介された医師の診断を受ける必要があります。

3.一次判定(コンピューターによる)

介護認定調査員の基本調査と、主治医の意見書の一部をコンピューターで分析し、要介護度を判定します。ここでの判断は、あくまで一次判定となります。

4.二次判定(介護認定審査会による)

一次判定の結果を受けて、介護認定審査会が最終的な介護認定を決定するのが二次判定です。認定調査会は、保健や医療、福祉の専門家で構成されています。

訪問調査での調査票の特記事項と、主治医の意見書を基に、要介護区分の妥当性などを検討します。

5.認定

認定は非該当(自立)、要支援1~2、要介護1~5の8段階です。
要介護認定は原則として申請から30日以内に結果が本人に通知されます。
何らかの事情により認定が遅れる場合は、見込み期間と理由を通知した上で30日以内に連絡が入るようです。

認定が決定したら、認定結果通知と認定結果が記載された被保険者証が届きます。
被保険者証には要介護状態区分や認定の有効期間などが記載されています。
認定結果通知書と被保険者証は原則として住民票の住所に送付されます。住民票とは異なる住所への送付を希望する場合は、あらかじめ市町村に相談しましょう。

審査結果に不服がある場合は?

認定が想定したよりも低い介護度になることもあるでしょう。
申請者本人が訪問調査員の調査時に、普段とは違う「しっかりとした対応」をしてしまうと、このような結果になることも少なくありません。

認定の結果に不服がある場合は、都道府県に設けられた介護保険審査会に処分の取り消しを求めることができます。不服申し立ては、認定結果通知を受け取った日の翌日から90日以内に行う必要があるので注意しましょう。

処分の取り消しが認められると、もう一度認定調査を受けることになります。
但し、取り消し処分は手続きにかなり時間がかかるので、認定の結果を変更したい場合には、「要介護状態区分の変更申請」を行う方がスムーズです。ただし、再調査の結果、認定が希望通りになる保証はありません。

介護保険サービスを利用するには、ケアプランが必要

介護保険サービスを利用するには、利用前に「介護・介護予防サービス計画書(ケアプラン)」を作成する必要があります。認定を取得しただけでは利用できないので注意が必要です。

ケアプランを作成するには、地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所へ連絡します。
連絡先は取得した認定の区分によって以下のように異なります。

非該当・要支援1~2と認定された人 地域包括支援センター
要介護1~5と認定された人 居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)

介護保険で利用できるサービスの種類やその量は、認定区分によって異なるものの、在宅で受けられるサービス・施設で受けられるサービス、福祉用具貸与など、さまざまです。

サービスの種類や内容については、記事「どんなメリットがあるの?介護認定で受けられるサービスの種類と内容」で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

また、介護サービスで負担する費用面が気になる人もいらっしゃるでしょう。
介護保険制度では、利用者の所得に応じて1~3割の負担をするのが基本です。ただし、すべてのサービスが無制限に使えるわけではなく、限度額が設けられています。

介護サービスの費用については、記事「介護保険の自己負担額はいくら?介護サービスの費用目安と支援制度」で詳しく解説しています。
介護サービスごとの料金目安だけでなく、費用の軽減・支援制度についても紹介していますので、ぜひお役立てください。
 

要介護認定は早めの申請を

要介護認定を申請しても、すぐに介護保険サービスが使えるわけではありません。
いざ介護が必要になった時に困らないためにも、要介護認定は早めに申請しておきたいものです。

本人が「まだ早い」と申請を拒む場合は、金銭面でのメリットを含めて説明するといいでしょう。「保険料を支払っているのに、利用しないのはもったいないよ」と話すと、気持ちが変わるかもしれません。
介護保険サービスが利用できると、介護する家族の負担を大きく減らせるので、ぜひ検討してみてください。

 

参考:
要介護認定 |厚生労働省
サービスの利用手順|横浜市
「親が倒れたら、まず読む本」渋澤和世(プレジデント社)