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よくわかる介護の話

2021年9月30日

『在宅介護のコツ』
体力を消耗しきってしまう前に知っておきたいこと

おうちでの介護は本当に大変です。日々のお世話に追われ、気付けば体中あちこちが痛い、疲れが抜けない、なんてことはあたりまえ……。

介護を続けるのに、何より必要なのは「気力と体力」です。しかし老老介護と言われるように、介護する側もだんだんと歳をとり、元気なつもりでも積み重なる疲労から体調を崩してしまう…ということも残念ながら少なくありません。

在宅介護では、おむつ交換やトイレの介添え、入浴の補助、椅子からの立ち上がり時の見守り、寝返りの介助など、休む間もなく次々とやらなくてはならないことが出てきます。今回の記事では、介護する側の体力消耗を少しでも避ける方法についてまとめてみました。

在宅介護「介護する人の悩み」とは

高齢化の進展により介護を必要とする人は増加傾向にあり、平成28年の厚生労働省の調査では、家族介護者も約700万人に増えています。約半数の人が身体的な負担を感じ、精神的負担にいたっては64%近くにのぼります。

実際に介護している方の体験談を、ごく一部ですがご紹介します。

  • 自分より背丈も大きく体重もある義父の介助は本当に大変。腰痛や膝の痛みは慢性的です(Nさん/63歳)
  • 母は要介護1ですが、歩くのは不自由なため、トイレに行くとき、入浴のとき、椅子から立ち上がるときに手伝うといった、ひとつひとつの動作で介助が必要。その都度、こちらの体力が奪われていく感じで夕方になると足がだるくなり、偏頭痛に悩まされるようになってしまいました(Tさん/55歳)
  • 自立のためと言われるが、家でリハビリを兼ねて運動するのだって大変。本人がやる気がないときに励ますのも大変だし、ちょっと気を抜くと転倒までいかなくても体がぐらりとすることもあって、目が離せない。それ以外の家事もあるわけで、1日の終りにはヘトヘトで、なのに疲れすぎて寝つけず不眠症になってしまった(Aさん/60歳) 
  • 介護をするにあたって、何が飛び抜けて大変、ということはありません。しかしそれが生活で、毎日ずっと続くから疲弊感も半端なく、蓄積される疲労感、慢性化してしまった腰痛や腕の筋肉痛、それとお尻から太ももにかけての痛み!整形外科に行く時間もなく、自分のために病院へ行く力もわいてきません……(Oさん/49歳)

皆さん、本当に大変な思いをしていらっしゃいますね。少しでも介護する側の負担を減らす方法はないのでしょうか?

在宅介護で体力を消耗しないために知っておきたいコツ

体力の消耗を防ぐ体の動かし方やコツを覚えると負担を減らす手助けのひとつになります。また、今はさまざまな介護支援用具がありますので、いろいろなモノ・サービスを上手に活用し、少しでも在宅介護での体力の消耗を防いでいきましょう。

ボディメカニクスを理解しましょう

ボディメカニクスとは、身体の特性を活かして、最小限の労力で要介護者等を支える、移乗・移動のための介護技術です。つまり、支援の必要な方の介助をするときの「体の使い方のコツ」ですね。

ボディメカニクス8つの原則とは

  1. 体を支える面積を広くとる
    足を大きく使い、自分の体を安定させる。
  2. 重心を低くする
    腰を低く落とすことで姿勢を安定させる。
  3. 重心移動を水平にしてスムーズに行う
    持ち上げるよりも、水平に滑らせるように移動させるほうが体の負担が少ない。
  4. 重心を対象者に近づける
    相手との距離を近くすることで介助しやすくなる。
  5. てこの原理を使う
    体の一部を支点とし、てこの原理を活用して負荷を減らす。
  6. 介護する方に両手や両足を組んでもらう
    抱えやすく、移動しやすくなる。
  7. 大きな筋群を使う
    手先だけを使うのではなく、大きな筋肉を使う。

これらは看護師や介護士が学ぶスキルのひとつです。すぐに全部実践しようと思っても最初はなかなか難しいかもしれませんが、いくつかは簡単に応用できます。

例えば重心を低くし、両足を広めに開き踏ん張ることで安定感が増して、抱きかかえやすくなります。てこの原理などをうまく活用できれば、無駄な体力を使わずにすみますので、知識として知っておくとよいでしょう。

実際に学べる家庭・在宅介護のコツやテクニック

在宅介護のコツ、テクニックが学べる講座もあります。介護士などが直接、体の支え方などを教えてくれるので具体的でわかりやすいのがメリットです。

自治体等が開催している在宅介護をしている方向けの講座などを受けてみるのもいいかもしれません。

最近ではオンラインによる講座もありますから、できれば主に介助をする方だけでなく、「ひとりでは本当に大変」ということも含めて理解してもらうために、ご家族全員で視聴するというのもいいですね。

便利な道具もどんどん使いましょう

ボディメカニクスのような体に負担をかけない動き方を知ること、できることは試してみること、それと同時に便利な道具はどんどん利用してみてください。

  • 電動介護ベッド
  • スライディングシート
  • 上下に昇降する座椅子
  • 屋内用手すり
  • 入浴用介助ベルト
  • てこの原理を利用した移動・移乗補助具

低摩擦素材を使ったスライディングシートはすべりやすくなっているため、ベッドに敷くことで寝返りの体位変換がしやすくなります。

動く座椅子は高さが電動で動くので座椅子に座り、そのまま上げることで椅子のように使えます。工事の必要がなく床に置いて使える屋内用手すりもあります。また、入浴介助は重労働のひとつですが、さまざまな支援用具があり、例えば介助ベルトを使うと、ベルトの持ち手を使い、抱えやすく抱き上げやすくなります。
てこの原理を利用して、車椅子や椅子から立ち上がる際の介助の負荷を減らすことができるものもあります。

これらの用具を使用しても「ほんの少ししか助けにならない」と思うかもしれませんが、在宅介護ではこの「少しの大変さ」が積み上がって大きな負担になります。大変なこと、体力を消耗することをひとつずつ減らしていくのが在宅介護のコツです。

ALSOK介護では福祉用具の貸し出しや販売も行っています。

ショートステイやデイサービスを上手に活用しましょう

さまざまな便利グッズを利用したとしても、結論からいえば介護はやっぱり大変です。

 

体力的な不安を解消するには、「介護する人のお休み」を作ることもとても大切です。冒頭の体験談にもあったように「介護は日々の暮らし」です。他の方からの体験談でも、

  • ようやくソファに座りコーヒーでも飲もうと思ったとたんに義母から呼ばれる。何か物を取ってあげるだけのことでも、ああ、またかと立ち上がるとき、自分の体が鉛のように重く感じる(Wさん/59歳)

といったようなことがあり、次第に疲れさえわからなくなってしまうということもあるようです。

要介護認定にもよりますが、使用できるサービスはぜひ利用してください。例えば、週3日デイサービスを利用できれば、その間にゆっくり休憩をとり、自分の時間だと意識して過ごすこともできます。

また、ときにはショートステイを利用して、まるまる1~2日、介護する人がゆっくり休める時間を作りましょう。もちろん、訪問介護を利用して日々の介助をお手伝いしてもらうヘルパーさんも頼んでください。

介護認定で受けられるサービスについては下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

在宅介護で大切なことは「共倒れにならないこと」

体力の消耗は、心の余裕を奪います。そして精神的な疲弊は体の疲れを倍増させます。介護は日々続くものであり、相手が大切な家族だからこそ、頑張らなくてはいけないという重圧や責任感からひとりで抱え込んでしまい、耐えきれなくなるまで踏ん張ってしまうことがよくあります。

在宅介護では共倒れになってしまうことだけは避けなくてはなりません。

「よし、便利な道具があるなら使おう!」
「入浴はヘルパーさんにお願いする!」
「ショートステイを利用して、自分は温泉に入ってマッサージをうけて1日のんびり過ごす!」

など、介護する人は少しでも負担を減らせることをやってみましょう。

在宅介護のテクニックやコツはいろいろとありますが、それは介護する人の負担を減らすこと、つまり介護をラクにして、少しでも笑顔が増えるようにすることです。自分を支えてくれる家族が笑顔でいてくれることが、介護される側にとっても幸せなことであることを、どうか忘れないでくださいね。