認知症介護のポイント
「認知症の方の世界を理解し、その世界を大切にする。現実とのギャップを感じさせないようにする。」
これが認知症介護のポイントです。時には認知症の方の話に合わせるために、嘘をついたり不本意な対応をしなければならないこともありますが、認知症の方の気持ちを理解して受け止めることが結果的に介護の混乱や負担を減らし、上手な介護につながります。
介護する側のストレスを軽くする7つのポイント
認知症の方の見ている世界を理解すると、その人の言動が受け入れやすくなり、介護もしやすくなります。
認知症の症状と特徴を以下に紹介していますので参考にしてみてください。
1.記憶にないことは、その人にとって「事実ではない」
本当のことを言い聞かせても納得できないのは、それが本人とって「事実ではない」ためです。
2.認知症の症状はまだらに現れる
認知症の始まりは、認知症の症状と正常な状態が混じりあって現れます。本人の不安も強くなり、その言動に周囲にも混乱が生じやすくなります。一つ一つの言動について認知症の症状かどうかを見分けることにこだわらずに、「これは認知症の症状だ」と考えてしまうほうが、介護する人にとっては気が楽になることがあります。
3.自分にとって不利なことは絶対に認めない
これは認知症の方にとって、自分の能力の低下を認めたくないための本能的な自己防衛とも考えられます。
4.身近な人に対して症状が強く出る
この症状のはっきりとした原因はわかりませんが、「身近な人だからこそ甘えが出るのだろう」と思って対応するしかないと考えましょう。
5.強く対応すると強い反応が返ってくる
認知症の方には、強く対応すると強い反応が返ってきます。「押してもダメなら引いてみる」という気持ちで対応しましょう。
6.できごとは忘れても感情は残る
認知症の方はできごとをすぐに忘れてしまいます。けれども、その時に抱いた感情は、記憶が消えてもしばらく残ります(感情残像の法則)。
7.ほとんどの症状は理解できるもの
認知症の方の言動は、認知症の特徴を思い出すことができれば、ほとんどが理解できるものです。さらに過去の経験を知ることでより深く理解できるでしょう。介護する人が症状の理由を理解すると、困った言動も受け止めやすくなります。すると、認知症の症状も落ち着いてきます。
徘徊・過食・不潔行動などへの対応のヒント
認知症の症状のうち、不眠・夕暮れ症候群・もの盗られ妄想・被害妄想・排便トラブル・過食などは、性格や体験、環境などが絡み合って現れます。そのため、周囲の対応や環境が変わると症状が落ち着くことがあります。
代表的な症状ごとに、その対応のヒントをご紹介します。
1.夜になると落ち着かなくなる・大声を出す
安心感を与えるために、部屋を明るくしたり、小さめの音量でラジオやテレビをつけておいたり、一人にしないといった対策をとると落ち着くことがあります。不安感や興奮でどうしても眠れない場合は睡眠薬などが処方されることもあります。副作用が出ることがあるので医師の注意をよく聞いて服用してもらいます。
2.夕暮れになると家を出ようとする
「ここが自宅ですよ」と言いたい気持ちはぐっとこらえて、「もう少しゆっくりしてください」「お茶をお出ししますね」「夕食も食べて行ってください」などと声をかけ、空腹を満たしたりするなどして落ち着くのを待ちましょう。
3.「物を盗られた」などの妄想にとらわれる
こうした症状の背景には経済的に厳しい時代を乗り越えてきたり、困難な状況の中で家族を守ってきた経験がある場合が少なくありません。まずは、それだけ懸命に生きてきたのだと受け止めてみてください。そして、認知症の方の言葉は否定せず、一緒に探して、見つかったときは喜びを共有しましょう。探している途中で話題を変えてみたり、第三者に入ってもらうことで落ち着くこともあります。
4.排便の失敗や失禁を隠す
失敗を否定したり隠したりするのは、プライドの表れです。一言でも謝ってもらえれば介護する側の気持ちも変わるのですが、認知症の方に失敗を指摘しても押し問答になり、よい結果につながらないでしょう。せめて一人での介護にならないよう家族や介護サービスのサポートを求めてください。介護する側のストレスや疲労は、認知症の方の症状にも影響するので悪循環が起こりやすくなります。
5.空腹を訴え続ける
「今仕事をしているから、これを食べておいて」と、おにぎりなどの軽食を渡すとよいでしょう。我慢させることで生じる混乱を考えれば、回数が多くなっても食べさせた方が落ち着いた状態を維持できます。認知症の進行とともに食欲は確実に落ちていきます。今は食べすぎなどを心配せず、要求を受け入れてもよいでしょう。
6.便を壁やタオルになすりつける
悪意が無くても、介護する人にはたいへんな負担です。また汚されたら…という不安も大きくなります。タイミングよくトイレに誘導できればよいですが、介護の手が少なければ現実的ではありません。負担を減らすためには、汚れやすい場所に紙を貼っておいて汚れたら取り換える、トイレやベッドの周りには汚れてもよい布や紙を敷き、家族が使うタオルは認知症の方の手の届かないところに置くなど、少しでも後始末が楽になるような工夫をしていくのがよいでしょう。
認知症の方の介護をひとりで抱え込んでいませんか?
認知症に関する知識を身に着け、対応方法を学び、その方の見ている世界を理解するということをお伝えしてきましたが、一番大切なことは「認知症の方の介護をひとりで抱え込まないこと」です。介護保険制度が施行されて20年、制度の目的である「介護の社会化」はだいぶ進んできました。それでもまだ、「どこかに相談できていれば…」と悔やまれるような事案が発生しています。そしてそのようなケースのほとんどが「ひとりで認知症の方の介護をしていて疲れ果ててしまった」ことが原因のように思います。
「オレンジカフェ」というのをご存知でしょうか?認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解しあう場のことで、認知症カフェとも言われています。相談や雑談ができ、地域の人に気軽に参加してもらうことを目的とし、開催されています。介護に疲れたり、悩んだりしたらぜひ足を運んでみてください。そこには同じような想いを抱えた仲間たちや、きっとあなたとあなたの家族の支えになる人がいます。
ALSOK介護の認知症を支える取り組み
地域への貢献
ALSOKグループでは、認知症の方を地域で支える社会を目指し、さまざまな取り組みを行っています。ALSOK介護では、ご入居者様やご家族様だけでなく、地域と連携してこれまでも介護事業をおこなってまいりました。例えば、認知症に関わる地域の方の情報交換や交流を図る「オレンジカフェ」、認知症に対する知識を地域に広める「認知症サポーター養成講座」などを通じて地域への貢献活動を行っています(養成講座を受講した職員はオレンジリングを身に付けています)。