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介護保険、2024年度の改正でどう変わる?主な変更点をチェック

2025年には、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が起こります。高齢者人口の急増に伴い、介護サービスの需要も加速度的に高まるのは、言うまでもありません。

こうした状況を受け、2024年度の介護保険制度改正では、介護サービス利用の対価である介護報酬の適正化や、質の高いサービス提供、介護職の労働環境改善などが図られています。限られた人材や原資の中で持続可能な介護提供体制を確立することが、制度改正の最大の狙いです。この記事では、2024年度改正の内容について、わかりやすく解説していきます。

2000年度比で介護サービス利用者は約3倍増加

介護保険制度とは、高齢者が必要とする介護サービスを受けられるよう、40歳以上の国民全員で保険料を負担する公的な制度です。2000年4月の施行以来、およそ3年ごとに内容の見直しが行われており、今回の改正は8回目(第9期)です。

過去を振り返ると、第2期(2006年)には介護予防や地域包括ケアが導入され、第7期(2018年)では利用者負担が引き上げられるなど、大きな変更がなされました。

定期的に見直される主な理由は、高齢化に伴う介護保険利用者の急増です。介護サービス利用者数は、2000年には約149万人でしたが、2020年には約494万人と約3倍に増加しました。さらに2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」が起こります。高齢化が一層進行する中、需要が増す介護需要に対して、財源や人材が不足するのは明らかです。今回の2024年度改正は極めて重要な意味を持っています。

2024年度に介護保険制度はどう変わる?

2024年度の制度改正では、介護保険サービスの料金体系である介護報酬が見直されます。デイサービス、訪問介護など介護保険サービスによって報酬額が決まっているため、施設が独自に価格を決定できません。ここを見直すことで、介護職の給与を引き上げる狙いがあります。

介護業界の有効求人倍率は全職種比で2〜3倍の推移を続けるほど慢性的な人手不足が課題ですが、大きな理由は給与の低さにあります。介護職の月当たりの給与は他業種と比べて約7万円も低いため、「仕事内容と報酬が見合わない」と定着しづらいのです。給与アップにより、離職の抑止と人材確保が期待されます。

介護報酬改定率は、1.59%。うち0.98%分は介護職の給料アップ分に、残りの0.61%は介護事業者の経営基盤の強化など介護職員以外の処遇改善に充てられます。さらに別予算から0.45%分の上乗せもあり、合計で2.04%の値上げとなります。

物価高に伴い、企業が賃金水準を引き上げる動きの見られる中、介護業界でも待遇改善の施策は待ったなしの状況です。

次からは、2024年度の制度改正ポイント4つをご説明します。

地域包括ケアシステムの深化・推進

高齢者が住み慣れた地域で切れ目のない介護を受けられるよう、地域包括ケアシステムの強化が図られます。このシステムでは、認知症の方や一人暮らしの高齢者、重い病気を抱える方に対し、それぞれの地域ニーズに合わせた質の高いサービスの継続的な提供を目指しています。

具体的には、病院と介護施設との連携強化、認知症ケアの充実、感染症や災害への対策など、さまざまな取り組みが計画されています。

自立支援・重度化防止に向けた対応

高齢者が自立した生活を送れるよう支援したり、病気の悪化を防いだりすることが重視されています。医師、介護スタッフ、栄養士などが協力して、総合的な取り組みを目指します。2024年度の改正では、口腔衛生管理が義務化されました。適切な口腔ケアを行えば自分の歯でしっかりと噛めるほか、誤嚥性肺炎のような感染症予防に繋がり、高齢者の健康維持に大きな意味を持ちます。

良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

介護の現場では慢性的な人手不足が課題となっており、結果としてサービスの質が低下する恐れがあります。この状況を改善するため、2024年度の制度改正では介護職員の処遇改善が重視されています。具体的には、給与水準の引き上げや働きやすい環境づくりなどが進められ、介護の仕事に就く人材の確保が図られます。並行して、ロボット技術やITの活用により、現場の生産性向上にも取り組むこととなりました。限られた人員でも効率的な介護サービスの提供ができる環境の整備が進みます。

制度の安定性・持続可能性の確保

介護保険制度の安定した運用を重視し、評価方法の見直しや料金体系の簡素化など、介護サービスをより利用しやすくする工夫が盛り込まれます。

介護現場で生産性の向上を目指すことを明記

今回の介護保険制度の改正において、注目すべき点の1つが介護現場での「生産性向上」が明記されたことです。介護業界は労働集約的で、生産性があまり意識されてこなかったことを考えると、大きな転換点と言えます。

生産性向上が重視される背景には、深刻な人手不足があります。高齢化の進展により介護需要が高まる一方で、2040年には介護人材が38万人不足するとの推計もあります。限られた人員でも質の高いサービス提供ができるよう、生産性向上が重要視されるようになったのです。

改正では、ICTや介護ロボットの活用、業務の効率化などが進められます。たとえば、見守りセンサーで利用者の異常を早期に発見したり、職員間の連携をITツールで円滑化したりできれば、現場の生産性は向上するはずです。つまり、介護現場の生産性向上は、人手不足という根本的な課題を解決するための鍵となります。

生産性向上で、介護サービス利用者にはどのようなメリットがあるのか

業務の効率化は職員の負担軽減につながり、結果として、一人ひとりの利用者に手厚いケアを提供できるようになります。経営の効率化によって新サービスの展開も可能となり、ニーズに幅広く応えられるようになるかもしれません。

生産性向上により、人員不足が解消すれば、安定した介護サービスの提供が可能です。デジタル化によって情報共有がスムーズになれば、より切れ目のないサポートを受けられるようにもなります。災害や感染症発生時にも業務継続が可能となり、利用者への影響は最小限に抑えられるのも利点です。

介護情報の電子化で、自分に合ったサービスを選びやすくなる

今回の制度改正では、介護情報の電子化が推進されます。自治体、利用者本人、介護事業所、医療機関が、本人の同意のもと、必要な情報を共有するシステムを整備する計画です。介護情報がオンラインで確認できれば、利用者は自分に合ったサービスを選びやすくなります。これは先に紹介した「自立支援・重度化防止に向けた対応」にも繋がります。

まとめ

2024年度の介護保険制度改正では、2025年に団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」を控え、人手不足の中で質の高い介護サービスを持続的に提供できる体制づくりが重視されました。具体的には、介護職の給与アップや介護現場の生産性向上による人材確保、業務効率化が推進されます。合わせて、地域包括ケアの推進や口腔衛生管理の義務化など、介護サービス利用者への切れ目のないサポートと自立支援、重度化防止への取り組みも強化されます。