アロマと認知症予防の関係は?気になる効果とおすすめの活用法を解説
認知症の非薬物療法の1つに「アロマ療法」があることから、「アロマは認知症に効果があるの?」と気になっている方もいらっしゃるでしょう。
いくつかの研究によって、アロマは認知症の進行を遅らせる効果が認められています。
現在の医療では、認知症を根本的に治療(完治)することができません。そのため、認知症の予防や進行防止につながるアロマの力が注目されているのです。
この記事では、アロマと認知症の関係について、エビデンスをもとに解説します。
最後までお読みいただくと、どんなアロマオイルを選べばいいのか、どのように使えばいいのかが分かるようになっているので、ぜひ参考にしてください。
アロマと認知症の関係
認知症にはいくつかの種類がありますが、アロマの効果が期待できるのは、「アルツハイマー型認知症」だけです。アルツハイマー型認知症は、認知症の6〜7割を占めます。
近年の研究により、アルツハイマー型認知症は、物忘れよりも先に嗅覚機能が低下することが明らかになってきました。嗅神経は、記憶をつかさどる海馬とつながっており、嗅神経を刺激することで海馬の活性化が期待されます。この仮説に基づき、鳥取大学の浦上克哉教授のグループが行った研究では、実際にその効果が確認されました。
研究で、認知症の予防と症状改善の効果が認められたアロマの組み合わせは、以下のとおりです。
昼用の香り | ローズマリー4滴+レモン2滴 交感神経を刺激。気分をすっきりさせ、集中力の向上や記憶力(認知機能)の強化を促す。 |
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夜用の香り | ラベンダー2滴+オレンジ1滴 副交感神経を刺激。気分を落ち着かせ、心身をリラックスさせる。 |
高齢者におすすめのアロマオイル5選
アロマオイルにはたくさんの種類があり、それぞれ香りはもちろん、作用や適応も異なります。高齢者が日常的に使用する場合は、香りだけでなく、認知症予防につながりやすいアロマを選びたいですよね。高齢者におすすめのアロマオイルは、以下の5つです。
アロマオイル | 適応 |
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ローズマリー | 認知症の脳の活性化・予防、血行不良、便秘など |
レモン | 認知症の脳の活性化・予防 |
ラベンダー | 認知症の脳の活性化・予防、認知症の周辺症状の不穏・興奮、不眠、不安、心のケア(不眠、イライラ、不安)、高血圧、免疫力向上など |
オレンジ | 認知症の周辺症状の抑うつ、不眠、不安、メンタルケア(軽度うつ状態) |
ローマンカモミール | 緊張、不安、筋肉痛、かゆみ対策、便秘 |
出典:『高齢者介護に役立つハーブとアロマ』林信一郎/今知美(東京堂出版)より、筆者作成
それぞれの香りや特徴について、簡単にご紹介します。
ローズマリー
ローズマリーは、清涼感のあるハーブの香りです。なかには、樟脳に近い香りと感じる人もいらっしゃるかもしれません。
目が覚めるような爽やかな香りなので、気分転換や、頭をクリアにする効果が期待できます。
レモン
アロマのレモンは、本物のレモンよりも酸味がマイルドで、スッキリとした香りです。
柑橘系のフレッシュな香りは、心身にリフレッシュ感をもたらし、気分をすっきりさせてくれると多くの人に好まれています。
レモンのオイルには殺菌効果もあるため、アロマディフューザーや芳香スプレーなどに使用するといいでしょう。
ラベンダー
ラベンダーは、女性に好まれやすいフローラルな香りです。甘くやわらかな香りの中に、ハーブの爽やかさがあります。ラベンダーの落ち着いた香りには、心身のバランスを整えるほか、リラックス効果があるとされており、就寝前に用いられるアロマとしても人気です。
オレンジ
オレンジは、新鮮なオレンジを絞ったようなフルーティーな香りです。日本人にはなじみがあるミカンの香りなので、老若男女に好まれます。同じ柑橘系でも、レモンはリフレッシュ効果、オレンジはリラックス効果が高いとされています。
ローマンカモミール
ローマンカモミールは、オイルの瓶から直接匂いをかぐと、甘さが強く鼻につきますがご安心ください。アロマディフューザーや芳香浴(ボウルにお湯を張ってオイルを垂らす)などにすると、青リンゴのような甘く優しい香りになります。
ローマンカモミールのやわらかくフルーティーな香りには、リラックス効果や、ストレスや不安を軽減する効果が期待できるとされています。
【アイテム別】高齢者に最適なアロマ活用法
ここでは、高齢者に最適なアロマの活用法を5つご紹介します。いずれも、安心・安全に使えるため、日常生活に取り入れやすいでしょう。「これならできそう!」という方法を選んでみてくださいね。
アロマディフューザー
アロマディフューザーは、アロマオイルを空気中に拡散させて香りを広げるアイテムです。
本体に水とアロマオイルを数滴垂らして電源を入れることで、オイルをミスト状にして室内に香りを拡散させます。
アロマディフューザーは、水とオイルをセットするだけで使用できるので、誰でも簡単に使えます。
アロマペンダント
外出時や場所を気にせずアロマを楽しむなら、アロマペンダントがぴったりです。アロマペンダントを使うと、香りに身をまといながら日常生活を送ることができます。
アロマペンダントには、ペンダントトップにオイルを垂らすタイプや、小瓶の中にオイルを入れるタイプなど、いくつかの種類があります。価格は材質やデザインなどによって異なりますが、安いものは1,000円前後から購入可能です。
アロマスプレー
アロマスプレーは、シュッとスプレーすると、室内にアロマのやわらかい香りが広がります。室内だけでなく、カーテンやクッションなど布製品にスプレーするのもおすすめです。アロマオイルは水に溶けないため、使用前によく振ってから使いましょう。
材料 | 無水エタノール:10ml お好みのアロマオイル:10滴 精製水(または水):40ml |
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用具 | スプレー容器※アルコール対応の容器を選ぶ |
作り方 |
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注意点 | 冷暗所で保管する 2週間程度を目安に使い切る |
お湯を張ったボウルやマグカップで芳香浴
アロマの香りを空間に広げて楽しむ芳香浴(ほうこうよく)は、ボウルやマグカップを使うと、とても簡単です。ボウルやマグカップに熱湯を入れ、その中にアロマオイルを数滴垂らすと、室内にアロマの香りが広がります。低温のお湯だと、香りが広がりにくいので、熱めのお湯を使いましょう。
マグカップで芳香浴を行う際は、使用するオイルの種類によって「おいしそうな飲み物」と勘違いする恐れがあります。マグカップの置き場所に注意しましょう。
ティッシュやハンドタオル
ティッシュやハンドタオルにアロマオイルを1〜2滴しみこませると、どこでもアロマの香りを楽しめます。枕元やデスクに置くだけでなく、胸ポケットに入れるのもいいでしょう。
アロマを使用する時の注意点
最後に、高齢者がアロマを使用する時に気をつけたい注意点を3つお伝えします。
天然のアロマオイルを選ぶ
アロマオイルは、天然(オーガニック)のものを選びましょう。化学合成品のアロマオイルは安価ですが、人体に影響を及ぼす恐れがあります。
アロマオイルは認知症高齢者の手の届かない場所に保管する
アロマオイルは、直接触れると危険です。認知症の高齢者の場合、誤飲につながるケースもあるため、アロマオイルは手の届かない場所に保管しましょう。
利用前に主治医に相談する
アロマは有害なものではありませんが、体質や健康状態によって、不調をもたらすことがあります。アロマを利用する前に、主治医に相談すると安心です。
まとめ
アロマは安全性が高く、高齢者も日常的に使いやすいアイテムです。アロマの香りは、認知症へのアプローチのほか、気持ちの切り替えや心の安定に役立ちます。
また、鎮静効果のあるアロマ(ラベンダーやベルガモットなど)を選ぶと、睡眠の質が上がる可能性があります。「眠りが浅い」「寝付きが悪い」など、睡眠に悩みがある人は、就寝時にアロマを取り入れてもいいでしょう。