着替えやすい服を選ぶのがポイント!
着脱介助をスムーズに行うコツ
着替えは、皮膚を清潔に保つだけでなく、生活にメリハリをつけるためにも大切なこと。
「ずっと家の中だから」「ベッドで過ごすことが多いから」という理由で、着替えの回数を減らすことは避けたいですよね。
そこでこの記事では、着替え(着脱介助)のコツや、在宅介護でおすすめの衣類について紹介します。着替えがスムーズにできると、本人・家族ともに、とても楽に、そして快適に過ごせるはずです。
着脱介助をスムーズに行う2つのコツ
まずは、着脱介助をスムーズに行うコツを押さえておきましょう。
着替えやすい服を選ぶ
衣類はその特徴によって、「着替えやすい衣類」と「着替えにくい衣類」があります。
着脱介助をスムーズにするには、はじめから「着替えやすい衣類」を選ぶことが重要です。
着替えやすい衣類 |
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着替えにくい衣類 |
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また、近年では、高齢者が着やすい・介助者が着せやすい服として「介護服」と呼ばれる衣類もあります。
介護服は、マジックテープやマグネットボタンなどで着脱しやすい工夫がされているのが特徴です。デザインも豊富なので、おしゃれを楽しみたい人にもおすすめです。
介護服はインターネットでの購入(通販)が主流なので、気になる人は検索してみてください。
次項より市販の上着、ズボン、下着の選び方を詳しく紹介します。
上着の選び方
上着は伸縮性があり、少し大きめのサイズを選ぶと失敗しません。
本人がメインで着脱する場合は、前開きシャツが着替えやすいでしょう。
上着を選ぶ時のチェックポイント
- 大きめのサイズ
- 肩幅が広め
- 脇から袖が広め
- 襟ぐりが広め(かぶりの上着の場合)
- ボタンやファスナーが大きめ
ズボンの選び方
ズボンは「ウエストがゴムタイプのもの」がおすすめです。
着用時に「どこも締め付けられない」「きつくない」状態になるものが理想です。
生地が硬いジーンズなどではなく、伸縮性のある生地を選びましょう。
注意点は、大きめサイズを選ぶと、どうしても裾が長めになりがちなことです。
長めの裾をそのままにしておくと、転倒しやすくなります。ゴムなどで裾を調整できるものを選ぶか、あらかじめ裾を詰めておくなどしておきましょう。
ズボンを選ぶ時のチェックポイント
- ウエストがゴムタイプ
- 伸縮性のある生地
- 裾が長すぎない(ゴムなどで絞って調整できる)
- お尻の部分にポケットやボタンがない
下着の選び方
高齢者向けの下着は、ゆったり着用できるサイズを選ぶのが基本です。
伸縮性があり、着用時に違和感がないように、縫い目の少ないものを選ぶといいでしょう。
加えて、下着は肌に直接触れるものだからこそ、素材選びも重要です。
素材 | 特徴 |
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綿(コットン) |
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化学繊維(ポリエステルなど) |
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快適に過ごすためには、季節や体調によって下着の種類を変えてもいいでしょう。
また、大手下着・通販メーカーなどが販売する「前開きインナー」は、介護が必要な人に最適です。デザインや色の選択肢も広がるので、検討してみてもいいでしょう。
下着を選ぶ時のチェックポイント
- 伸縮性があり、ゆったりしている
- 敏感肌の人は綿(コットン)製がおすすめ
- 自分で着脱したい人は化学繊維(ポリエステル)製がおすすめ
- 尿取りパッドを使用する男性は、ボクサータイプがおすすめ
着脱の順番を守る
着脱の順番を守ると、本人も介助者も楽に着替えができます。
着脱の基本は「着患脱健(ちゃっかんだっけん)」です。
文字のとおり、着る時は痛みやマヒがある側から、脱ぐ時は健康な側から行うと、着替えがスムーズになります。 「着る時は患側」「脱ぐ時は健側」を意識しましょう。上着(前開き)の着脱介助の手順
①上着のボタンを外して、肩の部分を脱がせる
仰向けの状態で、上着のボタンをすべて外します。
肩の部分をできる範囲で脱がせ、両肩が出ている状態にします。
②体を横向きにして、片方の袖を脱がせる
③着替えの袖を通す
④仰向けにして、反対側の袖を脱がせる
仰向けに戻して、反対側の袖を脱がせます。
本人の腕に負担がかからないように、ゆっくりと脱がせましょう。袖を勢いよく引っ張らないようにしましょう。
⑤体を横向きにして着替えの袖を通す
患側(痛みやマヒがある方)の腕が上になるように、体を横向きにします。
必ず患側の腕から着替えの袖を通します。
片方の手で、本人の肩を支えながら、もう一方の手で袖を最後まで通します。
反対側の腕も同様に袖を通します。
⑥ボタンをとめて、上着を整える
ズボンの脱衣介助の手順
次に、寝たきりの人へのズボンの脱衣介助の手順を解説します。
1.膝を立てた状態にする
2.膝を支えて、体を傾けながらズボンを下ろしていく
3.膝を伸ばした状態でズボンを脱がせる
ズボンの着衣介助の手順
最後に、寝たきりの人へのズボンの着衣介助の手順を解説します。
1.ズボンを足先から通す
ズボンは履かせやすいように、あらかじめ脚の部分をたくし上げておきます。
着患脱健の原則に従い、患側(痛みやマヒがある方)の足から、片足ずつズボンを通しましょう。
足を置いたままの状態でズボンを通そうとすると、かなり大変です。
片手で足首からふくらはぎの部分を支え、もう片方の手でズボンを通していくといいでしょう。
2.膝を立ててズボンを上げる
3.体を横向きにして、ズボンを上げる
体を横向きにして、ズボンをお尻まで上げていきます。
先に、患側(痛みやマヒがある方)を上にしてお尻にズボンを履かせ終えたら、反対側に横向きにします。もう一方のお尻側も同様にズボンを履かせましょう。
4.体を仰向けにして、整える
体を仰向けに戻して、仕上げにズレやしわを整えます。
着脱介助の注意点
最後に着脱介助時の注意点を3つお伝えします。
部屋の温度調整をする
着替えを行う部屋の室温は、23〜25℃を保ちましょう。
室温が低いと、着脱がスムーズにいかないだけでなく、本人の体にも負担がかかります。
着替えを行う前は「肌着一枚でも過ごせる室温」にしましょう。
必ず声掛けする
「今から着替えましょう」「袖に腕を通しますね」など、声をかけてから行動します。
誰でも、いきなり体を動かされると不安ですし、驚きますよね。転倒やケガのリスクを減らすためにも、声かけをしてから次の行動へと誘導しましょう。
サポートは最小限にする
着替えの介助は、最小限にしましょう。
本人の身体機能を維持するためにも、できることは自分でやってもらうことが大切です。
ファスナーの上げ下げや、ボタンの掛け外しなど、多少の時間がかかったとしても、できるだけ本人にやってもらいましょう。
しかし、本人の体調や状態によっては、「昨日はできたことが、今日はできない」こともあります。「袖はひとりでも通せるから大丈夫」として目を離した結果、バランスを崩して転倒する恐れもあります。できること・できないことを見極めるためにも、しっかりコミュニケーションをとりながら進めましょう。
自己流ではなく、正しい手順で介助をしよう
毎日何回も行う介助だからこそ、正しい手順で行いましょう。慣れるまでは少し時間がかかるかもしれませんが、何回かやっていくうちにスムーズにできるようになるはずです。
介護する人・される人のどちらにも負担がかからないように、着脱しやすい服を選ぶことも大切ですね。