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よくわかる介護の話
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認知症の家族への接し方・声かけのポイント

認知症の方の介護は大変ですよね。普通に話しかけたつもりでも、急に不機嫌になったり、意固地になってしまったり…、声かけひとつも難しいと感じることは多いようです。「どのように話しかけたら落ち着いて過ごせるのか」「どう接したら気分良く過ごしてもらえるのか」と悩んでいる方も少なくありません。

本記事では、認知症の方への声かけや接し方のポイントをまとめました。ぜひ参考にしてください。

認知症の方への接し方、ポイント3つ

認知症の方は、その程度の差はあるものの、次のようなことが多くなります。

  • 物忘れがひどくなる
  • 疑い深くなる
  • 攻撃的になる
  • 無気力になる

こうした状況をまず理解して、次のようなことに留意しましょう。

1.無関心ではなく見守る

介護する方の忙しさ、大変さはよくわかります。本人が静かにテレビを観ている、ベッドに寝ながら特に不自由がない様子に見える、こんな時は何もせずに長時間そのまま……ということも。でも、たとえ何も変化がなかったにしても、「だからとりあえず大丈夫」ではなく、適度に声をかけ、見守るようにしましょう。

2.ご本人のペースを理解する

認知症の方には、その方なりのペースがあります。食事や着替えなどでついつい「いつまで食べているの」「早くして」と言いたくなるかもしれません。でも、誰でも素早い動きはだんだん難しくなります。別のことに関心が向いてしまい、今やっていることを忘れてしまうような行動も珍しくありません。お世話をする方にとっては、苛立ちを覚えることもあるでしょう。でも、そこで叱ったり、「まだなの?」と急かしたりするのは逆効果です。

認知症の方は焦ると興奮したり、怒ったりすることもあるので、できるだけその方のペースに合わせるようにしたいですね。

3.プライドを傷つけない

同じことを何度も繰り返す、指摘したことをせずに違うことばかりをしている、こんな場面ではつい介護する方も声を荒げたくなるかもしれません。ただ、間違っていることを強い口調で指摘すると、認知症の方は余計に苛立ったり、逆にひどくふさぎこんだりします。頭ごなしに否定したり、強く訂正したりするのは避けましょう。

認知症の方への声かけポイント3つ

認知症の方への声かけは次の3つについて特に留意するようにしましょう。

1.はっきり・ゆっくり・やさしく

認知症に限らず、高齢になると音や声が聞き取りづらい傾向があります。ですから、早口にならないように気をつけて、ゆっくり話しかけましょう。また、明瞭にハッキリと発音することもポイントです。

ただし、はっきり・ゆっくり話そうとすると、どうしても「言い聞かせるような」口調になりがちです。やさしい言葉遣い、やさしいトーンで話しかけましょう。

2.簡潔にわかりやすく

一度にたくさんのことを話すと、認知症の方は混乱しやすいようです。ひとつずつ、相手の反応を見ながら話しましょう。また、長い話も伝わりづらいので、なるべく短く区切って話したほうがいいですね。

3.敬う気持ちをもって語りかける

どんなに気をつけていても、無意識のうちに命令をするような口調になってしまったり、忙しい時などは苛立ちまじりの声かけになってしまったりしがち……。

介護する方にとっては毎日のことだけに難しい面もあるでしょう。それでも、家族への愛情、年上の方に対する敬う気持ちを持ってお話ができるようにしたいですね。

認知症の方への声かけ・言い換えの例

では、具体的にどのように声をかけるのがよいのか、例を見ていきましょう。

同じ質問を繰り返すときは

よくあるのが、何度も同じことを聞かれるケースです。ご本人に悪気はありません。答える側もいちいち取り上げていると、ストレスがたまります。聞かれたら、さらっと答えるのが一番です。

例1「今日の昼ごはんはなに?」と何度も聞かれた時

悪い例

「何度言ったらわかるの」
「さっきも教えたじゃない」

良い例

「親子丼ですよ」

記憶にないための発言には

認知症の方は、少し前のことも忘れてしまうことがよくあります。きっちり訂正したくなりますが、さらりと受け流しましょう。

例2「昼ごはんはまだ?」とすでに食べ終わっているのに聞かれた時

悪い例

「さっき食べたじゃないの」
「もう忘れたの?昼ごはんは食べ終わってるってば」

良い例

「あら、一緒にテレビを見ながらお昼を頂いたわよ?お夕飯はまだだから、お茶でもいれましょうか」
「今日のお昼に頂いたうどん、おいしかったわね。おなかがすいているなら、後でおやつを用意するので少し待っててね」

人としての尊厳を大切に

言葉が持つ力はとても大きいです。
「気をつけてって言ったでしょ!こぼさないで!」と
「あら、こぼしちゃった?」
ちょっとした言い方の違いで、相手は萎縮したり興奮したり、反対に穏やかに受け入れたりもします。

認知症の方にはその方に見えている景色・世界があり、周囲とは別の流れの中で行動することも多くあります。ご本人の性格を考慮しつつ、「なぜ?」「どうして?」と考えすぎずに、穏やかに接していきたいですね。

常に意識したいのは「人としての尊厳を大切にすること」です。

どの方にも、振り返れば歩んできた長い人生があり、その人生の一部は家族のためでもあったはずです。認知症の方とどう接するか、どう話すかは、テクニックもありますが、何よりも「敬う気持ち」「感謝の気持ち」を持ち続ける努力が大切なのではないでしょうか。

介護する方が「こうしなくては」「このようにお世話をしなくては」と焦り、相手に「(介護する側の)理想の結果」を求めてしまうと、次第に不満や負担がふくれていきます。他に家族がいても、いなくても、介護をひとりで抱え込んでしまうのはとても辛いことです。

共に暮らし、日々介護をしていれば、時にはイライラすることもあり、つい棘のある言葉を返してしまうこともあると思います。「尊厳?きれいごとなんか言っていられない!」と、認知症の方と暮らす生活では、実際にそうした場面があるでしょう。

もし「もういい加減にして」と怒鳴ってしまうようなことがあったら、少し立ち止まって介護の方法も改めて考えてみましょう。たとえば、ショートステイやデイサービスの利用も検討してみてはいかがでしょうか。

苛立ちや疲弊感が、つい言葉をきついものにしてしまうことがあります。家庭での介護を続けるためにも、介護する方が心身ともにゆっくり休めるように、こうしたサービスを利用することをおすすめします。