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介護と介助の違いは?
家庭での日常介助の方法と注意点を種類別に解説

ここで紹介する日常介助の種類

  1. 寝返り介助
  2. 歩行介助
  3. 食事介助
  4. トイレ介助
高齢者は、加齢や病気をきっかけに、日常生活の動作が難しくなることがあります。
そのような時に必要となるサポートを「介助」や「介護」と呼びますが、違いが分かりにくいですよね。介助は「手助けする行為そのもの」、介護は「介助を含む全体的なサポート」を指します。
介助 生活の基本動作をサポートし、スムーズに動けるように手助けする行為
介護 生活全般をサポートすること(身体介助・精神面のケアも含む)

誰でも歳を重ねると体力や筋力が弱まり、自分の体を思うように動かせなくなりますよね。特に高齢者は加齢や病気をきっかけに、日常生活の動作が難しくなることがあります。

そんなときに必要となるのが日常介助です。日常介助とは、日常生活の基本動作をサポートし、スムーズに動けるようにすることを指します。
正しい知識を持たずに介助を行うことは、実はかなり危険です。介助者だけでなく、介助される本人にとっても大きな負担となります。

そこで、この記事では家庭で行う日常介助の方法を種類別に解説します。介護の負担を軽くするためにも、適切な介助方法を身につける参考にしてください。

日常介助を行う際の4つの心得

まずは日常介助を行う際の4つの心得を押さえておきましょう。

1. 介助はできるだけ最小限にする

介助はできるだけ最小限にするのが基本です。できることは自分でやってもらい、できない部分だけを介助します。

そのためには「何ができて、何ができないのか」を日頃から観察しておくことが大切です。
「大変そうだから」「時間がかかるから」と何でも介助してしまうと、筋力の衰えにつながります。必要以上に介助すると、本人のできることを減らしてしまうので注意してください

2. 本来の「自然な動き」に逆らわない

介助は人間本来の自然な動きに逆らわないように行いましょう。
無理に引っ張ったり不自然に動かしたりすると、介助される人は痛みや恐怖を感じてしまいます。

介助者は「この場合は、自分はいつもどのような動きをしているか」をイメージしながら行うといいでしょう。これに加えて、てこの原理やボディメカニクスなどを活用すると、介助者の負担を大きく減らすことができます。

3. 介助は「慌てず、ゆっくり」が基本

介助は慌てずゆっくり行いましょう。介助者が「時間に間に合わない」「早くしなければ」と急いでいると、介助される人の気持ちも落ち着きません。

介助はなるべく動作を細かく区切って、丁寧に行うのが理想です。ひとつずつ動きを止めて次の動作に移ると、安全を確保しやすいでしょう。

4. 介助する前に必ず声をかける

介助は必ず声をかけてから行いましょう。これもとても大切なことです。これから行う動作の内容だけでなく、動作の目的を具体的に伝えると、介助される本人は安心できます。

▼例

良くない例:「立ち上がってください」
よくある例:「椅子から立ち上がりましょう」
良い例  :「これから着替えをするので、椅子から立ち上がりましょう」

介助される本人に「なぜその動作が必要なのか」が伝わると、「動かなければいけない」という気持ちになります。本人が動作に協力的になると、介助もスムーズに行うことができます。

【種類別】家庭での日常介助の方法と注意点

では、実際に家庭で日常介助を行う方法を種類別に解説していきます。

1. 寝返り介助

寝返りの介助は、体のねじれを利用して最小限の介助にとどめましょう。
基本は声かけメインで行い、動作が難しい場所があれば適宜サポートします。

▼寝返り介助の方法

(1)両膝を立てる
介助する人は、寝返る側に立ち、声をかける。
「寝返りのお手伝いをしますので、両膝を立ててください」
両膝を揃えて、かかとをお尻に近づけるようにして両膝を立てる。
(ご自身でこの動きができない場合は、説明のお声かけをしながら介助する)

(2)両手を上げる
「胸の前で手を組んでから、腕を真上に伸ばしてください」と声かけをする。
腕を思いっきり伸ばすのがポイント。
(ご自身でこの動きができない場合には、説明のお声かけをしながら、例えば胸の前で腕を組んでさしあげる)

(3)頭と肩を上げる
「そのままの姿勢でおへその辺りを見てください」
おへその辺りをのぞきこむような姿勢を促す。すると、頭と肩が自然に上がる。

(4)人差し指を膝と手に置き、手前に引く
介助者は、(3)の姿勢の本人の膝と手(腕を胸の前に組んでいる場合は、肩)に、自分の人差し指をそれぞれ置く。
「寝返ります」と声をかけてから手前に引く。

<注意点>

  • 両膝は高く立てる(なるべくお尻に近づける)
  • 力任せに引っ張らない

2. 歩行介助

歩くことができると移動が楽ですし、行動範囲も広がります。
ただし、足腰が弱っていると転倒などの事故につながる恐れがあるので、安全な介助方法を知っておきましょう。

▼歩行介助の方法

(1)隣に立って手をつなぐ
「これからトイレまで歩きましょう」などと声かけをして、介助者は本人の隣に立つ。
本人が右利きの場合は、介助者は本人の左側に立つ。
介助者は手のひらを上にする。介助される人はその上に自分の手を乗せて、手をつなぐ。
介助者の手を杖にするイメージ。

(2)腰を支える
本人が歩くときにバランスを崩さないよう、腰に介助者の右手を添える。足腰が弱っており、バランスを取るのが難しい場合は、ベルト部分をつかんでもいい。

(3)介助者は手と腰を支えながら歩く
そのままの状態で本人のペースに合わせて歩く。

<注意点>

  • 手をつかんで引っ張るのはNG
  • 必ず本人の速度に合わせる
  • 正面に立って手を引く介助方法は、バランスを崩しやすい、背後が見えないなどの危険があるのでやめておく

3. 食事介助

食事は生命を維持する栄養補給だけでなく、人生を豊かにする楽しみでもあります。可能なかぎり口から食べることができるように工夫しましょう。

【自分で食べられる工夫】

  • 食べやすい道具を選ぶ
  • 手づかみで食べられる物を用意する
  • 食べやすい食形態(刻み食、ソフト食、とろみ食など)を選ぶ
  • 正しい姿勢で食べる

【食べてもらうための工夫】

  • 一日を活発に過ごす
  • 好きな物を食べる
  • 外食をする
  • 家族での団らんや友人との会食を利用する

▼食事介助の方法

(1)隣に座って介助する
「これからご飯を食べましょうね」などと声かけをして、本人の利き手側に座る。

(2)食べたい物を聞いて、スプーンに乗せる
食べたい物を聞いたら、スプーンに半分くらい取る。一口の分量はティースプーン1杯くらいが目安。

(3)スプーンは下から運び、斜め上に抜く
食べ物を口へ運ぶときには、本人の利き手側の下から口の中に持っていく。
舌の中央に食べ物を置いたら口を閉じてもらい、スプーンを斜め上に抜く。

(4)喉の動きを見るなどして、きちんと飲み込めているかを確認する。

<注意点>

  • 介助者が立ったままで食事の介助をしない
  • 向かい合った状態での食事の介助はNG
  • スプーンを口の上から入れてはいけない
  • 口に合った大きさのスプーンを選ぶ

4. トイレ介助

トイレに行って排泄するということは尊厳を守る上でとても重要なことです。可能な限り、トイレでの排泄を心がけましょう。排泄はプライベートな行為なので十分に配慮しながら介助を行います。
排泄終了の合図をあらかじめ決めておくと、双方の心理的負担を減らすことができます。

▼トイレ介助の方法

(1)衣類の上げ下ろしをお手伝いする、便座に座ってもらう
トイレ介助は本人ができないことだけを介助する。
例えば、自分で衣類が脱げない場合は、ズボンとパンツの後ろ側(おしり部分)を下してから便器に座ってもらい、前側は自分で下してもらう。

(2)排泄中はドアの外で待機
本人が排泄している間は、介護者はドアの外で待機する。ただし、異変に気が付けるようにドアを少しだけ開けておく。あらかじめ決めておいた排泄終了の合図でトイレに入る。

(3)自分で拭くことができないときは手伝う
本人が自分で拭くことができないときは手早く手伝う。

<注意点>

  • 焦らせたり、急かしたりしない
  • 自尊心を傷つけるような言動をしない

無理せず、プロの手を借りることも検討しよう

日常的な介助は、きちんと行おうとすればするほど、時間も手間もかかります。かといって「時間がないから」「忙しいから」と、あれもこれも介助すると本人のできることはどんどん減ってしまうでしょう。

家庭での介助に負担や難しさを感じたら、ためらわずに人の手を借りることが大切です。介護保険サービスを利用して、介護のプロにお任せするのもいいですね。入浴介助など家庭での対応が難しい介助をお願いすると、家族の負担軽減にもなるでしょう。

本人も、介助する家族も、ともに笑顔でいられるように、負担を軽くする方法を検討しましょう。

参考書籍:イラスト図解 いちばんわかりやすい介護術|三好春樹(著)