シニアライフを支える家
〜サービス付き高齢者向け住宅とシルバーハウジング〜
年を重ねても自分らしく暮らしたい。でも、いざという時の不安も気になる。そんな高齢者の方々のニーズに応えるのが、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。見守りや生活相談といった安心のサービスが付いた賃貸住宅として、2011年の制度化以降、新しい住まい方の選択肢として注目を集めています。
高齢者向けの住宅といえば、かつては公営住宅の一種であるシルバーハウジングが代表的でしたが、現在は民間事業者による多様なサービスを備えた住宅が増えています。本記事では、サービス付き高齢者向け住宅の特徴から入居条件、提供されるサービスまで、くわしくご紹介していきます。
この記事でわかること
サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、2011年の高齢者住まい法の改正により制度化された、高齢者の安心な暮らしを支える住まいの形態です。一般的な賃貸住宅とは異なり、安否確認や生活相談などの基本的な生活支援サービスが付いた賃貸住宅で、バリアフリー設計や緊急時対応など、高齢者に配慮した設備や体制を整えています。
サービス付き高齢者向け住宅の種類
- 住宅型:対象は自立~軽介護度の方。独居や老老介護で日々の生活に不安を感じる方向け。介護サービスが必要な場合は、訪問介護などの外部サービスを個別契約。
- 介護型:厚労省が定める特定施設入居者生活介護の指定を受けている。介護付有料老人ホームと同様のサービスが提供される。
下記の調査でも、介護型はわずかに8%です。
サ高住の入居者条件
- 60歳以上の高齢者
- 要介護・要支援認定を受けている方
- 配偶者(60歳未満でも可)
- その他同居者(60歳以上)
この入居条件は、高齢者のさまざまな生活状況に配慮して設定されています。60歳以上という年齢要件は定年後の住み替えニーズに対応するものですが、要介護・要支援認定を受けている方は年齢に関係なく入居が可能となっています。
配偶者については60歳未満でも入居できる点が特徴的です。これにより、夫婦が離れ離れに暮らすことを防ぎ、高齢期も共に過ごせる環境を提供しています。また、その他の同居者については60歳以上という条件が付きますが、これは高齢の兄弟や親族との同居を可能にするものです。
なお、施設によっては独自の入居条件を設けている場合もあり、入居時には保証人の設定や家賃保証会社の利用が必要となることが一般的です。入居検討時には、現在の心身の状態や将来的な介護ニーズとともに、これらの条件も確認することが重要です。
サ高住における登録基準と設備要件
サービス付き高齢者向け住宅として登録されるためには、以下の基準を満たす必要があります。
住戸の基準
- 床面積は原則25㎡以上(居間、食堂、台所等が共同利用の場合は18㎡以上)
- 各戸にトイレ、洗面設備を設置
- バリアフリー構造(段差解消、手すりの設置など)
- 原則個室で、プライバシーが確保されていること
建物の基準
- 耐火建築物または準耐火建築物であること
- 一定の防災・避難設備を備えていること
- エレベーターの設置(3階建て以上の場合)
基準は、高齢者が安全で快適な生活を送るために必要不可欠な要件として定められています。特に住戸の広さについては、一般的なワンルームマンションよりもゆとりのある25㎡以上を基準としていますが、共用スペースが充実している場合は18㎡まで緩和されます。これは、居間や食堂などの共用空間での交流も重視する考えに基づいています。
バリアフリー構造の要件は、高齢者の転倒防止と自立した生活の支援を目的としています。具体的には、廊下や居室の段差をなくし、適切な場所への手すり設置、浴室やトイレの安全性確保などが求められます。また、各戸へのトイレと洗面設備の設置は、プライバシーの確保と夜間の安全な移動に配慮したものです。
建物全体の安全性については、火災や災害への対策が重視されています。耐火性能の確保に加え、スプリンクラーの設置や避難経路の確保、非常用照明の設置などの防災設備も必須となっています。3階建て以上の建物にエレベーター設置を義務付けているのも、高齢者の上下移動の負担軽減を考慮した基準です。
要するに、シニアが暮らすにあたって、「不安材料」や「心配なこと」を軽減している、まさに「高齢者向け住宅」が、サービス付き高齢者向け住宅なわけです。
これらの基準を満たした上で、各施設は独自の特徴を加えることができ、より充実した設備やサービスを提供している施設も多く存在します。温泉があったり、広々としたラウンジやジムが設置されていたりするところもあります。
入居を検討する際は、基準を満たしているかの確認に加え、実際の設備やサービスの内容をくわしく確認しましょう。
サ高住で提供されるサービス
基本サービス(必須)
- 安否確認サービス
- 毎日1回以上の安否確認
- 緊急時の対応体制
- 24時間の職員常駐(多くの施設で導入)
- 生活相談サービス
- 日常生活に関する相談対応
- 介護サービスの利用相談
- 医療機関との連携支援
付帯サービス(施設により異なる)
- 食事の提供
- 掃除・洗濯等の家事援助
- 健康管理支援
- アクティビティの提供
- 買い物支援
サービス付き高齢者向け住宅では、入居者の安心で快適な生活を支えるため、いろいろなサービスを提供しています。基本サービスとして必ず提供される安否確認と生活相談は、入居者の安全確保と自立した生活の継続に重要な役割を果たしています。
安否確認サービスでは、職員が定期的に入居者の様子を確認し、体調の変化や困りごとにいち早く気づくことができます。多くの施設では24時間体制で職員が常駐しており、夜間の緊急時にも迅速な対応が可能です。
また、各居室には緊急通報装置が設置されており、体調不良時などにすぐに助けを求めることができます。
生活相談サービスでは、日常生活での困りごとから、介護サービスの利用に関する相談まで、幅広い支援を提供します。特に、介護が必要になった際の各種手続きや、適切な医療機関の紹介など、専門的な知識を要する相談にも対応しています。
付帯サービスは施設によって内容や料金が異なりますが、食事の提供は多くの施設で実施されている重要なサービスです。栄養バランスの取れた食事を提供することで、入居者の健康維持に貢献しています。また、共用の食堂での食事は、入居者同士の交流の機会にもなっています。
その他の付帯サービスについても、入居者の状態や希望に応じて必要なものを選択できる仕組みになっています。自立度や生活スタイルに合わせた柔軟なサービス利用が可能となり、その時々の状況に応じた適切な支援を受けることができます。
サービス付き高齢者向け住宅で受けられるサービス内容の実態とは
2020年12月の調査結果ですが、全国のサービス付き高齢者向け住宅で実際に提供されているサービスです。
状況把握と生活相談は必須とされているサービスです。食事の提供もほぼ100%に近いですね。
入浴や家事のサービスを提供しているところも約半数あります。なんといってもスタッフが日々状況を確認してくれるので、思わぬ怪我をしたときや体調がすぐれないときも安心です。
サービス内容は各住宅によって違うので、どのようなサービスを利用できるのかを必ず確認しましょう。
「安心と快適」が得られるサービス付き高齢者向け住宅
老人ホームと聞くと「わたしは健康だし、介護も必要ない」とおっしゃる方も多いのですが、そもそも老人ホームといってもその種類はいろいろあります。
中~重度の介護が必要な人のための特別養護老人ホームや、認知症の高齢者向けグループホームなどありますが、今回ご紹介するサービス付き高齢者向け住宅は比較的元気で自立した生活をおくることができる人が対象です。
サービス付き高齢者向け住宅は、もちろん出入りも自由でこれまでの暮らしと大きくライフスタイルが変わることはありません。
また、サービス付き高齢者向け住宅のほとんどが賃貸住宅のため、入居一時金がかからないところも多くあります(別途敷金が必要な場合はあります)。賃貸ですから、その後に状況が変わって別の老人ホームに入りたいとか子どもの近くに移りたいというときも、退去しやすいメリットもあります。
なによりスタッフが毎日「体調はいかがですか?」などと様子を聞いてくれる、何か困ったときには生活全般の相談にのってくれる、というのはご本人にとってもご家族にとっても大きな安心ですね。
「介護は必要ないけど自宅で過ごすには少し不安がある」と思っている方、老人ホームに入るほどではないけど高齢のご両親が心配という方は、サービス付き高齢者向け住宅を検討してみてはいかがでしょうか。
実際のサービス付き高齢者向け住宅はこんな感じです!
上記はALSOK介護が運営しているサービス付き高齢者向け住宅の部屋の写真です。自由にインテリアを変えて、自分好みのお部屋にすればリラックスして過ごせますね。
外観も高級なマンションそのものです。でもよくみると、スロープや手すりなどシニアにとって暮らしやすい設備が整っています。
共用部分も広々とした明るい雰囲気ですね。詳しくはこちらからどうぞ。
そのほかALSOK介護のサービス付き高齢者向け住宅について詳しくはこちらからどうぞ。
ALSOK介護のサービス付き高齢者向け住宅についてはこちらシルバーハウジングとは
シルバーハウジングとは、住宅施策と福祉施策の連携により、高齢者等の生活特性に配慮したバリアフリー化された公営住宅等と生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常生活支援サービスの提供を併せて行う、高齢者世帯向けの公的賃貸住宅です。
シルバーハウジングもサービス付き高齢者向け住宅と似ていますが、こちらは公営です。市町村から委託された生活援助員が安否確認などの生活支援を行ってくれます。
入居における条件のひとつに所得があります。これは運営元が地方公共団体なのか都市再生機構(UR)なのかで違いがあります。
運営元が地方公共団体の場合は低所得世帯も入りやすいようになっており、いっぽう運営元が都市再生機構の場合では継続して賃貸住宅で暮らせるような一定の月収や貯蓄があるかを確認します。
シルバーハウジングについては、各地方公共団体や都市再生機構等の窓口でまず相談してみましょう。
参考:UR賃貸住宅公式サイト居心地良く、安心して暮らせる家を見つけよう
最近は高齢者向け住宅がとても人気があります。
昔のように大家族で三世代が同居し、おじいちゃんおばあちゃんの様子を常に誰かが見ていられる家は少ないのが現状です。
「遠くにいて、ひとり暮らしの親が心配」な子世帯がこれまでの生活と変わりなく過ごしながら、ひとり暮らしの親には見守りのあるサービス付き高齢者向け住宅を勧める、ということも増えています。
また高齢者自身が、お子さんがいる・いないに関わらず、老後の生活を早めに考え、行動力のあるうちに体が不自由になっても暮らしやすい住居を見つけたいと検討することも多いようです。
人生100年時代では、シニアライフもプランを立てて考えることがこれからは必要です。
賃貸のサービス付き高齢者向け住宅で快適な暮らしを続けながら、必要に応じてサービスを受け、介護の必要度が高くなったら介護付老人ホームへと移るといったように、長い目でみた「ライフプラン」を考えていきましょう。
それぞれの希望にあった住まいと、体力や健康に応じた必要なサービスを活用し、ぜひ快適なシニアライフを実現してくださいね。
参考:シルバーハウジングプロジェクトとは/一般財団法人高齢者住宅財団
高齢者施設がわかる本/太田差惠子著