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成年後見制度の法改正で何が変わる?「終身制」廃止と身寄りのない高齢者への影響

2026年6月17日、成年後見制度の見直しを含む改正法が国会で可決・成立し、同月24日に公布されました。今回の改正のいちばん大きなポイントは、これまでの成年後見制度を、より利用しやすい仕組みに見直すことです。この記事では、なぜ制度が見直されたのか、具体的に何がどう変わるのか、身寄りのない高齢者や施設に入居する方への影響、そして実際に新しい制度を利用できるようになる時期までを、わかりやすく解説します。

成年後見制度が見直された理由

今回の見直しの背景には、「利用したいけれど、なかなか踏み出せない」という制度の使いにくさがありました。

これまでの利用状況

認知症の高齢者は、厚生労働省の将来推計(認知症施策推進総合戦略に基づく2020年時点の推計)で全国に約600万人にのぼるとされる一方、成年後見制度の利用者は最高裁判所の集計で2025年12月末時点においても約26万人にとどまっており、必要としている方の一部しか制度を利用できていない状況でした。

さまざまな課題

なぜ、これまでの成年後見制度はあまり利用されてこなかったのか?最大の要因は「終身制」と言われています。一度制度を利用すると、本人の判断能力が回復しない限り、原則として亡くなるまでやめることができませんでした。また、後見人には財産管理などについて幅広い代理権・取消権が与えられるのですが、本人の意思が十分に尊重されにくいという指摘もありました。

加えて、弁護士や司法書士などの専門職が後見人になった場合、報酬として月額2万〜6万円程度がかかり、これが生涯にわたって続く経済的な負担も、利用をためらう理由のひとつでした。

こうした課題を受け、法制審議会で見直しが検討され、2026年4月3日に改正法案が閣議決定され、国会に提出されました。その後、6月17日に可決・成立し、6月24日に公布されています。

今回の法改正で変わる3つのポイント

比較項目 現行制度 改正後の制度
利用期間 原則終身 必要な期間
制度 「後見」「保佐」「補助」の3制度 「補助」を基本とした制度へ一本化
支援内容 変更しにくい 状況に応じて見直せる
支援する人の交代(成年後見人等) 変更しにくい 必要に応じて変更しやすい

①「終身制」を見直し、必要な期間だけ利用できる制度へ

現行制度では、一度成年後見制度を利用すると、基本的に本人が亡くなるまで続きます。改正後は、支援の目的を達成したり、制度が不要になったりした場合には、家庭裁判所の判断により利用を終了できるようになります。

たとえば、「実家の売却が終わるまで」「遺産分割がまとまるまで」といったように、目的に応じて制度を利用しやすくなります。

② 「後見」「保佐」を廃止し、「補助」に一本化

現在の「後見」「保佐」「補助」の3つの区分は見直され、「補助」という1つの制度に一本化されます。

本人の判断能力や支援の必要性に応じて、どのような支援が必要かを家庭裁判所が個別に決定します。「本人ができることは本人が行い、必要な部分だけ支援する」という考え方が、これまで以上に重視されます。

③ 必要に応じて支援内容や支援者を見直しやすく

現在は、一度成年後見人などが選任されると、途中で変更することは容易ではありません。

改正後は、本人の状況や希望の変化に応じて、支援内容や支援者を見直しやすい制度になります。家庭裁判所が状況を確認しながら、より柔軟に運用される仕組みとなります。

新制度移行における経過措置について

なお、この新制度が適用されるにあたって、経過措置が実施されます。現在成年後見制度を利用している人やその家族の方たちにとって、自分たちにも新制度が適用されるのか気になるところだと思います。後見・保佐・補助など、大まかには以下のようになります。
  • 後見・保佐などを継続→基本的には現行法の内容で利用継続可能
  • 後見・保佐などを継続し、新制度に移行したい場合→申立が必要
  • 後見・保佐制度の利用をやめたい場合→申立が必要
  • 補助を継続→改正後の内容で継続利用可能
  • 補助制度の利用をやめたい場合→申立が必要
いずれも細かい規定等があるので、こちらの「経過措置」でご確認ください。

身寄りのない方・高齢者施設入居者への影響

身寄りのない高齢者にとって、成年後見制度は、財産管理や契約手続きなどを支える重要な仕組みです。今回の制度改正でも、この基本的な役割は変わりません。

成年後見制度では、後見人などが本人に代わって財産を管理したり、介護・福祉サービスの利用契約や施設への入居契約など、生活に必要な法律行為を支援したりします。一方で、食事や入浴などの日常的な介護や身の回りの世話は成年後見人等の役割ではなく、これまでどおり施設や介護サービスが担います。

身寄りのない方が施設へ入居する際には、成年後見制度を利用して契約手続きを行うケースがあります。ただし、成年後見制度の利用を必須としているかどうかは施設によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。また、貴重品の管理や各種手続きなどについても、施設が対応する範囲と成年後見人等が担う範囲をあらかじめ確認しておくと安心です。

改正後は、本人に必要な支援の内容に応じて、家庭裁判所が支援する権限や期間を個別に定められる仕組みへと見直される予定です。そのため、たとえば「施設への入居契約だけ」「一定期間の財産管理だけ」といったように、必要な場面に合わせて制度を利用しやすくなることが期待されています。

費用・申し立て手続き・いつから始まるのか

制度が実際に新しくなるまでには、もうしばらく準備の期間が必要です。

申立てができる人

成年後見制度の利用を希望する場合は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

申立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族のほか、身寄りがない場合などには市区町村長が申立てを行うこともできます。

費用はどうなる?

成年後見人等が弁護士や司法書士などの専門職の場合、報酬は家庭裁判所が決定します。現在の目安は、管理する財産の状況などにもよりますが、月額2万〜6万円程度です。

改正後は、必要な期間だけ制度を利用できるようになるため、利用期間が短くなれば、結果として総額の負担を抑えられる可能性があります。

また、状況によっては、任意後見制度や家族信託など、ほかの制度の利用も選択肢となるため、あわせて検討するとよいでしょう。

新制度はいつ始まる?

改正法は、公布日から2年6か月以内に、政令で定める日に施行されます。

そのため、施行日は現時点ではまだ決まっておらず、今後、政府が正式に定める予定です。

成年後見制度だけでなく、任意後見制度や家族信託が適している場合もあります。それぞれ仕組みや法的な権限が異なるため、制度の利用を検討する際は、弁護士や司法書士などの専門家に相談した上で、方法を選ぶようにしましょう。

よくある質問

Q. 成年後見制度は、途中でやめられるようになるのですか?

A. 家庭裁判所が「支援の必要がなくなった」と判断した場合に、利用を終了できるようになります。ただし、本人の意思だけで自由にやめられるわけではなく、あくまで家庭裁判所の判断が必要です。

Q. 新しい制度はいつから使えますか?

A. 改正法は2026年6月24日に公布されており、施行日は公布から2年6か月以内で、今後政令によって定められます。現時点(2026年7月)では、施行日はまだ決まっていません。

Q. 「後見」「保佐」「補助」の違いはどうなりますか?

A. 現在の3つの区分は廃止され、「補助」という1つの制度に一本化されます。本人の判断能力や必要な支援の内容に応じて、家庭裁判所が個別に支援の範囲を決める仕組みになります。

まとめ

今回の法改正は、成年後見制度を「必要なときに、必要な範囲・期間だけ使える制度」へと大きく転換するものです。成年後見制度は施設入居などの場面で重要ですが、役割は主に財産管理や法律行為への対応であり、日々の介護そのものは担いません。施行の時期が近づいてきたら、市区町村の窓口や法テラス、地域包括支援センターなどに早めに相談し、ご本人やご家族に合った準備を進めていきましょう。ALSOK介護でも、今後の制度の動きにあわせて、みなさまに役立つ情報をわかりやすくお届けしていきます。

参考: