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アドバンス・ケア・プランニング(ACP/人生会議)とは?知っておきたい「始め方と進め方」

「人生会議」という言葉を、テレビやニュースで耳にしたことはありますか?正式名称はアドバンス・ケア・プランニング(ACP/Advance Care Planning)といい、もしものときに備えて自分が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・介護チームと繰り返し話し合うプロセスのことをいいます。

「縁起でもない」と避けてきた方も多いかもしれませんが、これは自分らしく生き抜くための、とても前向きな対話の取り組みです。高齢の親を持つ子世帯の方にも、また高齢者本人にも、ぜひ知っておいてほしい内容です。この記事では、ACPの基本から始め方まで、わかりやすくご紹介します。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?

厚生労働省では、アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)を「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組み」と定義しています。日本老年医学会もACPの推進を提言しており、医療・介護の現場でも広く取り組みが進んでいます。

「ACP」という専門的な言葉をより身近に感じてもらえるよう、厚生労働省は2018年に「人生会議」という愛称を決定しました。終活(財産・葬儀など死に向けた準備全般)や事前指示書・リビングウィル(延命治療への意思を文書に残すもの)と混同されることがありますが、ACPはこれらとは異なります。文書を作ることが目的ではなく、価値観や希望を伝え合い、互いに理解し合う「話し合いのプロセス」そのものに本質があります。

日本は超高齢社会を迎え、医療の高度化により最期の迎え方の選択肢も複雑になりました。厚生労働省の意識調査(令和4年度)によると、人生の最終段階の医療・ケアについて家族等と「詳しく話し合っている」方は全体の約3%にとどまっており、多くの人がまだ話し合えていないのが現状です。自分が意思を伝えられなくなる前に希望を共有しておく重要性は、かつてより格段に高まっています。そして大切なのは、ACPは一度話し合えば終わりではないということです。年齢や体の状態、価値観の変化に合わせて繰り返し話し合い、考えをアップデートしていくことがACPの真髄です。

なぜ必要?アドバンス・ケア・プランニングがもたらす5つのメリット

ACPに取り組むことで、本人にも家族にも多くの安心がもたらされます。

  • 本人の意思を尊重した医療・ケアの実現
  • 家族の心理的負担の軽減(いざというときの判断に迷わない)
  • 家族間のコミュニケーションや関係性が深まる
  • 医療・介護チームとの連携がスムーズになる
  • 本人が安心して残りの人生を過ごせる

「自分のためだけでなく、家族のため」としてACPを始める方も少なくありません。意思を伝えられなくなったとき、家族は本人の代わりに医療の選択を迫られることがあります。

「あのとき、もっと話しておけばよかった」という後悔は、介護に関わる多くの家族が口にする言葉です。事前に希望を共有しておくことは、家族が深く悩まずに済む、大切な思いやりでもあります。ACPは「暗い話」ではなく、大切な人たちへの愛情の表れです。 では、具体的な始め方を見ていきましょう。

今日から始める人生会議「最初の一歩とタイミング」

ACPに特別なタイミングは必要ありません。元気なうち、入院が決まったとき、病気の診断を受けたとき、身近な人の介護や看取りを経験したときなど、日常のさまざまな場面が話し合いのきっかけになります。特に「元気なうち」に始めることが、冷静に自分の気持ちを整理できるのでおすすめです。

話し合う相手は家族や信頼できる人が中心ですが、かかりつけ医や訪問看護師、ケアマネジャーなど医療・介護の専門職を交えることもできます。ひとりで抱え込まず、サポートしてくれる人を巻き込むことが大切です。最初のテーマは「どこで過ごしたいか(自宅・施設・病院など)」「どんな治療を望むか」「自分が大切にしている価値観は何か」といったことから始めると話しやすいでしょう。ニュースや身近な出来事を話題にして、自然に切り出すのもおすすめです。 自治体や公的機関が提供する記録シートもいろいろとあります。

  • 「わたしの思い手帳」(東京都保健局):自分の思いを書き込めるブックレット
  • 価値観シート(神戸市医師会):大切にしていることを整理するシート
  • 人生会議の記録(大阪府):話し合いの内容を記録・共有するシート

こうしたシートを手元に置きながら話し合うと、言葉にしにくい気持ちも少しずつ整理されていきます。

インターネット上で回答していくと、考えがまとまる「ACP(厚生労働省/神戸大学)」のサイトもあるので、活用してみてはいかがでしょうか?

アドバンス・ケア・プランニングの進め方と継続のポイント

ACPは「一度決めたら終わり」ではありません。人生の状況や価値観、医療技術の進歩によって、考えは変化していくものです。ACPを無理なく進め、継続していくためにはどのようにすればよいでしょうか。

まず、定期的に見直すことが大切です。誕生日や年始など節目のタイミングを見直しの機会にするとよいでしょう。体の状態や気持ちが変わったときにも、改めて話し合う機会を設けましょう。 そして、話し合った内容は記録し、保管場所を家族と共有しておくことで、本人の意思を医療・介護関係者に正確に伝えられます。また、かかりつけ医や担当ケアマネジャーに内容を共有すると、いざというときに希望が反映されやすくなります。

考えが変わることはとても自然なことです。以前の記録を更新しながら、最新の意思を共有していきましょう。家族間で意見が分かれた場合は、本人の意思を中心に置くことが基本です。担当医や医療ソーシャルワーカー(医療や福祉の専門職で、患者・家族の相談支援を行う職種)などに間に入ってもらいながら、一緒に解決策を探しましょう。

自分らしく生き抜くために、今日から「人生会議」を始めよう

アドバンス・ケア・プランニング(人生会議)は、特別な人だけのための取り組みではありません。誰もが取り組める、対話のプロセスです。完璧な答えを出す必要はなく、最初から全部決めなくても大丈夫です。大切なのは「話し合う」ことです。一度話してみると、「もっと早く話しておけばよかった」と感じる方もたくさんいらっしゃいます。

難しく考えず、まずは何気ない会話から始めてみてください。自分の気持ちを少しずつ言葉にして、信頼できる人と共有することが、自分自身の安心にも、大切な家族の心の支えにもなります。「もしものとき、どうしたい?」という問いが、自分らしく生き抜くための大切な一歩になるはずです。