高齢者の皮膚トラブルの原因と予防法|症状の種類・毎日のケアと受診の目安
高齢者の肌は加齢とともにバリア機能が低下し、乾燥・かゆみ・湿疹・感染症といった皮膚トラブルが起こりやすくなります。一度悪化すると慢性化しやすいため、日常的なスキンケアと早期対処による予防が重要です。
この記事では、高齢者の皮膚トラブルが起きやすい理由と、代表的なトラブルの種類・原因、毎日のスキンケアでできる予防ポイントをまとめました。
なぜ高齢者は皮膚トラブルが起きやすいのか
高齢者の肌が敏感になる主な理由は、以下のとおりです。
- 皮脂分泌・発汗量の減少
加齢とともに皮脂や汗の分泌が少なくなり、皮膚の表面が乾燥しやすくなります。若い頃は皮脂膜が皮膚表面を覆って水分蒸発を防いでいますが、高齢になるとその機能が弱まります。
- バリア機能の低下
皮膚の角層(最も外側の層)が水分を保持する力が衰え、細菌・化学物質・摩擦などの外部刺激に対して敏感になります。
- 皮膚の菲薄化(ひはくか)
皮膚自体が薄くなり、傷つきやすく、傷の治りも遅くなります。特に真皮のコラーゲンや弾性繊維が減少することで、皮膚のクッション機能も失われていきます。
- 乾燥(ドライスキン)の進行
角層の水分量が低下した状態をドライスキンといい、かさつきや亀裂、強いかゆみが起こりやすくなります。「カサカサ」した肌がかゆくなり、ついついこすってしまったり、爪でひっかいたりして、さらに悪化させることもよくあります。
- 免疫機能の低下・低栄養の影響
免疫力の低下や栄養不足は皮膚の自己修復力を弱め、感染症や炎症が起きやすい状態をつくります。
高齢者に多い皮膚トラブルの種類と原因
| 症状名 | 主な症状 | 主な原因・特徴 |
|---|---|---|
| 皮脂欠乏性湿疹 | 膝下の亀甲模様の亀裂・強いかゆみ | 皮脂の減少による乾燥が引き金。冬に悪化しやすい |
| 褥瘡(床ずれ) | 皮膚の赤みやただれ、潰瘍 | 寝たきりによる持続的な圧迫・血流障害 |
| 白癬(水虫・爪白癬) | 皮膚のかゆみ・ただれ、爪の変形など | 白癬菌の感染、高齢者は爪白癬に進行しやすい |
| カンジダ症 | 皮膚の赤みや白い発疹・かゆみ | 免疫低下・おむつ使用などによる真菌感染 |
| 帯状疱疹 | 片側の水ぶくれ・激しい神経痛 | 加齢・免疫低下によるウイルス再活性化。神経痛が長期化するリスクも |
| 疥癬(かいせん) | 全身の強いかゆみ(夜間に悪化) | ヒゼンダニの寄生 |
| 皮膚そう痒症 | 発疹のないかゆみ |
乾燥・腎臓肝臓疾患・薬の副作用など複合的な原因 |
(参考:東邦大学医療センター大橋病院「高齢者がかかりやすい皮膚病とは」/在宅診療でみられる高齢者の皮膚疾患)
出典:https://www.toho-u.ac.jp/press/2016_index/20160927-716.html
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/60/4/60_60.339/_pdf/-char/ja
毎日のスキンケア5つのポイント
① 保湿(入浴後10分以内・1日2回以上)
保湿剤はたっぷり1回塗るよりも、1日2回(朝とお風呂上がりなど)以上、こまめに塗るほうが効果的です。入浴・清拭(せいしき)後は10分以内を目安に塗布しましょう。こすらず、やさしくなじませることが大切です。保湿剤やセラミド配合クリームなど、皮膚科医や薬剤師に相談しながら自分の肌に合ったものを選ぶとよいでしょう。
出典:https://www.niwell.or.jp/news/health/000308.html
② 洗浄(低刺激・ゴシゴシこすらない)
ゴシゴシ洗いは皮脂を奪い、皮膚を傷つけます。弱酸性の低刺激石鹸をよく泡立て、ぬるめのお湯でやさしく洗いましょう。入浴時のお湯は熱くしすぎないようにし、長湯も皮膚の水分と皮脂を奪うため注意が必要です。洗浄後はやわらかいタオルで押さえるようにして水分を取り除きましょう。また、陰部・股間・わきの下などの皮膚が重なる部位は汚れや湿気がたまりやすいため、清拭時に特に丁寧に確認することが大切です。
③ 室内環境の管理(加湿・適温)
室内の湿度が低すぎると皮膚の乾燥が進みます。加湿器を活用し、湿度は40〜60%程度を保つよう心がけましょう。冬場はエアコンや暖房によって室内が乾燥しやすいため、特に注意が必要です。こたつや電気毛布の長時間使用も皮膚の水分を奪うため、使いすぎに注意しましょう。
出典:https://www.niwell.or.jp/news/health/000308.html
④ 衣類・寝具による保護
長袖・アームカバー・レッグウォーマーなどで皮膚の露出を減らし、摩擦を防ぎましょう。衣類や寝具はなめらかな素材(綿やシルクなど)を選ぶと、かゆみや皮膚への刺激が起こりにくくなります。洗濯の際は洗剤が残らないよう十分にすすぐことも大切です。
⑤ 毎日の皮膚チェック(早期発見が大切)
入浴時や着替え時に全身を観察する習慣をつけ、赤み・傷・水ぶくれ・変色がないか確認しましょう。特に背中・かかと・おしり(褥瘡が起きやすい部位)は念入りに確認することが大切です。介護者が毎日チェックすることで、異変に早く気づくことができます。
皮膚科を受診すべきサイン・目安とは
日常的なケアで改善が見られない場合や、以下のような症状がある場合は、早めに皮膚科を受診してください。
- かゆみや赤みが2週間以上続く
- 傷がなかなか治らない
- 水ぶくれや膿(うみ)がある
- 皮膚の変色・黒ずみ・においが気になる
- 急激に悪化している
「少し様子を見よう」と思わず、気になる症状があれば早めに皮膚科へ相談することが、悪化を防ぐ最善策です。
皮膚を清潔に保つための入浴介助と訪問介護の活用
毎日の入浴や清拭は、皮膚を清潔に保ち、皮膚トラブルを予防するための基本です。しかし、高齢者本人や介護するご家族だけで毎日続けることは、身体的にも精神的にも大きな負担になることがあります。
こうした場面で活用したいのが、訪問介護やデイサービスのプロによるサポートです。たとえばALSOK介護の訪問介護・ホームヘルプサービスでは、身体介護の一環として入浴介助・清拭・洗髪などのサービスを提供しています。専門のスタッフが丁寧に対応するため、高齢者本人の肌の状態を確認しながら清潔を保つケアが受けられます。
| 訪問介護(ホームヘルプサービス) | 自宅に専門スタッフが訪問し、入浴介助・清拭・洗髪など皮膚を清潔に保つためのケアをサポート |
|---|---|
| デイサービスでの入浴サービス | 通所施設での入浴により、浴室設備や専門スタッフのサポートのもとで安全に清潔を保つことができる |
| 介護する側の負担軽減 | 介護者がひとりで抱え込まず、専門家と分担することで、心身両面の余裕が生まれる |
「なかなか入浴できていない」と悩まれているご家族も少なくありません。訪問介護サービスを上手に活用することで、高齢者本人がより快適に過ごせる環境を整えることができます。
また、介護スタッフが定期的にケアを行うことで皮膚の異変に早期に気づく機会も増え、皮膚トラブルの重症化を防ぐうえでも大きな意味を持ちます。
専門家のサポートも活用しながら快適に過ごせるように
今日からできることをまとめます。
- 入浴・清拭後10分以内に保湿剤を塗る(1日2回以上)
- 低刺激石鹸とぬるめのお湯で、やさしく洗う
- 室内の湿度を40〜60%に保つよう心がける
- 長袖・アームカバーで皮膚の摩擦・露出を減らす
- 毎日、皮膚の状態を観察する習慣をつける
- 気になる症状は早めに皮膚科へ相談する
- 入浴・洗髪が難しい場合は、訪問介護やデイサービスの活用を検討する
介護するご家族が頑張りすぎず、専門家のサポートをうまく取り入れながら、高齢者本人も介護する側も、なるべく快適で穏やかな毎日を過ごせるよう、一つひとつのケアを積み重ねていきましょう。
監修者
ALSOK介護株式会社 医療連携部 看護師
瀬戸山 美香