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認知症による近所トラブルを防ぐには?家族ができる対応と相談先

認知症の身内を介護されているご家庭では、「もし近所に迷惑をかけてしまったら…」という不安を抱えていませんか。実際に、認知症の症状によって隣人とのトラブルが起こることは珍しくありません。しかし、適切な準備と対応をすることで、トラブルを未然に防いだり、万が一のときもスムーズに解決したりすることができます。この記事では、実際に起こりうるトラブル事例と、その予防策、発生時の対応方法まで具体的にお伝えします。ひとりで抱え込まず、地域や専門機関と協力しながら乗り越えていく方法を一緒に考えていきましょう。

認知症「よくある隣人トラブル」とは?

認知症の症状によって起こりうるトラブルは多岐にわたります。ここでは、実際によく相談される事例を4つご紹介します。

【事例1】夜間の徘徊や大声による騒音トラブル

深夜に外に出て行ってしまったり、夜中に大声を出したりする行動は、認知症の方によく見られます。ご本人は過去の記憶の中で行動しており、決して迷惑をかけようとしているわけではありません。

しかし、隣人の方にとっては睡眠を妨げられる深刻な問題となります。特に集合住宅では、深夜の物音や声が響きやすく、苦情につながりやすい状況があります。また、夜間の徘徊はご家族の方はもちろん、地域の方々にとっても不安ですし、深刻な問題となりがちです。

【事例2】他人の敷地への侵入や物の持ち去りトラブル

認知症が進行すると、見当識障害により「ここはどこか」「これは誰のものか」という判断が難しくなり、隣家の庭に入ってしまったり、玄関先の物を持って帰ってしまったりすることがあります。

実際にあった例

  • 隣家の新聞を自分のものだと思って持ち帰ってしまう
  • 隣家の花壇で花を積んだり草取りをしてしまう

状況によっては大きなトラブルにもつながりますので、注意が必要です。

【事例3】ゴミ出しルール違反や不適切な処理による問題

ゴミの分別や収集日のルールは、認知症の方にとって複雑でわかりにくいものです。曜日の感覚がなくなったり、分別方法を忘れてしまったりすることで、ルール違反が起こります。

具体的には以下のようなトラブルがあります。

  • 収集日以外の日にゴミを出してしまう
  • 分別せずにすべてのゴミを一緒に出してしまう
  • 他の人のゴミステーションに出してしまう

この問題は、地域の美観や衛生面にも関わるため、町内会や自治会などから指摘を受けることもあります。

【事例4】近隣住民へのしつこい訪問や迷惑行為

認知症の方は、不安や孤独感から、何度も同じことを話したり、同じ家を訪問したりすることがあります。ご本人にとっては初めての会話のつもりでも、訪問された側は同じ話を何度も聞かされることになります。

特に独居の認知症の方や、日中ひとりで過ごす時間が長い方に多く見られる行動です。ご本人は「誰かと話したい」「不安を解消したい」という思いから行動しているのですが、相手の方の負担となってしまうことがあります。

こうしたトラブルを防ぐためには、日頃からの備えと関係作りが重要です。

認知症による隣人トラブルを防ぐための心構えと関係作り

本人の状態などを適切に隣人に説明をする

診断を受けた早い段階で、近隣の方に状況を説明することをおすすめします。タイミングとしては、明らかな症状が出る前、あるいは軽微なトラブルがあった直後が適切です。ただし、ご本人の尊厳やプライバシーにも配慮し、必要以上に詳しい情報を伝える必要はありません。「物忘れが進んでいて、ときどき混乱することがあります」といった程度の説明で十分です。

協力してもらえるように緊急連絡先の共有などを行う

名刺サイズのカードに、ご家族の名前と電話番号を記載して、両隣や向かいの家などにお渡ししておきましょう。「何か気になることがあれば、遠慮なく連絡してください」と伝えることで、小さな問題のうちに対応できます。

町内会や自治会との連携方法

自治会長さんや班長さんに状況を伝えておくことで、地域全体で見守る体制を作ることができます。自治会の集まりや地域のイベントに、可能な範囲で参加することも、顔の見える関係作りにつながります。

見守りネットワークへの参加と活用法

多くの自治体では、高齢者を地域で見守る「見守りネットワーク」を整備しています。地域包括支援センターに問い合わせれば、お住まいの地域のネットワークについて教えてもらえます。登録しておくことで、地域全体で見守ってもらえる安心感が得られます。

隣人との信頼関係構築のための日頃のコミュニケーション

日常的な挨拶や声かけは、信頼関係を築くいちばんの基本です。顔を合わせたら必ず挨拶をし、「いつもありがとうございます」と声をかけることで、「気にかけてくれている」という印象を与えることができます。

プライバシー保護と情報共有のバランスについて

認知症であることを伝える際、どこまで情報を共有すべきか悩む方は多いでしょう。基本的には、トラブルを防ぐために必要最小限の情報だけを伝えれば十分です。具体的な症状や服薬状況、病院名など、プライバシーに深く関わる情報を伝える必要はありません。

ご本人がいる前で「この人は認知症で…」と説明するのは避けましょう。本人の気持ちを大切にしながら、必要な協力を得るバランス感覚が求められます。

万全の準備をしていても、トラブルが起きてしまうこともあります。次は発生時の対応方法を見ていきましょう。

もし認知症の家族が隣人とトラブルを起こしてしまったら?ポイント4つ

1:問題の状況を整理する

まずは冷静に、何が起きたのかを正確に把握することが大切です。

  • いつ、どこで、何が起きたのか
  • 誰にどのような迷惑をかけたのか
  • 本人がどのような状態だったのか
  • 同様のトラブルが繰り返されていないか

メモを取りながら整理すると、後でケアマネジャーに相談する際にもスムーズです。

2:近所への謝罪・説明

できるだけ早く、直接お詫びに伺いましょう。まず誠意を持って謝罪し、認知症という病気による行動であることを説明します。そして、「デイサービスの日数を増やします」など、具体的な再発防止策を伝えることで、相手の方も安心できます。

3:専門機関への相談と公的支援を検討

トラブルが起きたら、ひとりで抱え込まず、必ず専門機関に相談しましょう。

ケアマネジャー ケアプランの見直しや適切なサービスの提案
地域包括支援センター 総合的な相談窓口
かかりつけ医 症状を和らげる薬の調整など
民生委員 地域の福祉の専門家として相談に対応
厚生労働省の「認知症に関する相談について」のページにも相談窓口の情報が掲載されています。

4:認知症サポート体制の活用と長期的な対策を考える

デイサービスやショートステイの利用日数を増やすことで、「困ったな」という行動が減ることもあります。もしトラブルが頻繁に起こるようになった場合は、将来的な施設入所も視野に入れて検討することが必要かもしれません。これはご本人に、より適した環境を整えるための選択肢のひとつであり、ご家族にとっても無理のない介護を続けるための大切な判断です。

認知症サポート体制の活用と長期的な対策を考えるには

地域包括支援センターの役割と相談方法

地域包括支援センターは、高齢者の生活を総合的に支える相談窓口です。介護保険の申請から、認知症に関する相談まで、幅広く対応してくれます。相談は無料ですし、ぜひ利用しましょう。

認知症サポーターや民生委員について

認知症サポーターは、認知症の方やその家族を温かく見守る応援者で、全国に1,600万人以上います。また、民生委員は地域の福祉を担うボランティアで、高齢者の見守りや相談支援を行っています。

介護保険サービスを活用しトラブルを軽減

デイサービスを利用すれば、日中は施設で過ごすため、近隣とのトラブルが起こりにくくなります。また、活動的に過ごすことで夜はよく眠れるようになり、夜間の徘徊も減少します。早めに利用を始めることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

将来を見据えた対応策の検討

症状が進むにつれて、対応が難しくなることもあります。グループホームや特別養護老人ホームなど、認知症の方に適した施設の情報を集め、見学に行っておくことをおすすめします。将来の選択肢を知っておくことで、心の余裕も生まれます。

法的トラブル発生時の相談先を見つけておく

隣人トラブルが深刻化し、損害賠償などの法的問題に発展した場合は、法テラスに相談しましょう。地域包括支援センターでも、法的問題について相談できる窓口を紹介してもらえます。

こうした地域のサポートに加えて、専門的な見守りサービスの活用も安心につながります。

見守りサービスにはさまざまなタイプ・システムがあります。おすすめサービスや選び方のポイントなど、詳しくはALSOK介護の見守りサービス紹介記事をご覧ください。

地域の力で、認知症の方も家族も安心して暮らせる

認知症による隣人トラブルは、決して珍しいことではありません。いちばん大切なのは、ご近所の方々に状況を理解していただくことです。日頃からの挨拶や声かけなど、近所の方々や地域とのコミュニケーションも重要です。顔の見える関係があれば、お互いに理解し合えることが多いのも事実です。

そして、ケアマネジャーや地域包括支援センター、介護保険サービスなど、活用できる制度や支援を積極的に利用しましょう。トラブルの予防策を講じることで、家族の負担やストレスを減らすことができます。また、状況に応じて、将来的なプランを考えておくことも大切です。

認知症の介護は、ひとりで抱え込むものではありません。ご家族だけで何とかしようとせず、地域や専門機関の力を借りながら、みんなで支え合っていきましょう。