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高齢者がおむつを外してしまう!家族ができる対策と排泄ケアの工夫

高齢者のおむつ外しは、介護をするご家族にとって大きな悩みのひとつです。「せっかく交換したのに、すぐに外してしまう」「なぜこんなことをするのだろう」と困惑されることも多いのではないでしょうか。しかし、おむつを外す行動には、高齢者なりの理由があります。その気持ちに寄り添いながら、対策を講じることで、ご本人の尊厳を保ちつつ、ご家族の負担も軽減できるのです。今回は、おむつ外しの理由を理解し、家族ができる具体的な対策と排泄ケアの工夫についてお伝えします。

どうしておむつを外してしまうの?

高齢者がおむつを外してしまうのには、ご本人なりの理由があることを理解することが大切です。

まず考えられるのは、身体的な不快感です。おむつによる蒸れや違和感、締め付け感は、辛いものです。特に高齢になると肌が敏感になるため、わずかな刺激でも大きな不快感を感じやすくなります。

認知症がある場合は、記憶の混乱や見当識の障害(今がいつで、どこにいるかなどの基本的な認識がわからなくなる状態)が影響することもあります。おむつが何なのかわからず、「異物」として外そうとしたり、過去の記憶から「着けるものではない」と感じたりすることがあります。

さらに、「自分のことは自分でしたい」「人に迷惑をかけたくない」という自立への強い願いが根底にある場合も少なくありません。

このような背景を理解することが、ご本人に寄り添った対策を考える第一歩です。

高齢者のおむつ外し対策

おむつ外しへの対策は、まずご本人の気持ちに寄り添うことから始まります。具体的な対策を、段階的に見ていきましょう。

おむつ選びと装着のポイント

おむつ選びは、不快感を軽減する重要な要素です。

  • サイズの適正化:きつすぎず、ゆるすぎないサイズ選択
  • 吸収量の調整:排尿量に合わせた適切な吸収力の選択
  • 通気性の重視:蒸れを防ぐ素材や構造の製品選択
  • 肌触りの良さ:敏感な肌にやさしい素材の選択

装着時には、テープの位置や締め具合を調整し、圧迫感を軽減することが大切です。また、定期的な交換により清潔さを保つことで、不快感の原因を取り除くことができます。

日常の声かけ・コミュニケーション

コミュニケーションの工夫は、ご本人の不安を和らげる効果があります。

  • 前向きな声かけ:「これから○○しましょうね」と次の行動を伝える
  • 安心できる表情:笑顔で穏やかに接する
  • 自尊心への配慮:「ありがとうございます」「すっきりしましたね」など、感謝や共感の言葉をかける
  • 説明と同意:なぜ必要なのかを丁寧に説明し、理解を求める

特に認知症がある場合は、その時々の気持ちに合わせた対応が重要です。無理に説得するのではなく、ご本人のペースに合わせることで、抵抗感を和らげることができるでしょう。

アイテムや介護用下着などの活用

どうしてもおむつを外してしまう場合は、補助的なアイテムの活用も検討できます。介護用下着(おむつと一体化したタイプ)、つなぎ型の衣類(背中でファスナーを留めるタイプ)などがありますが、ご本人が窮屈な思いをしないよう、気をつけましょう。ご本人の尊厳と快適性を最優先に考え、他に対策できることはないか、専門家に相談しながら検討しましょう。

このような対策を講じることで、おむつ外しの頻度を減らすことができますが、さらに大切なのは排泄ケア全体の質を向上させることです。

より良い排泄ケアをめざして

排泄ケアは、介護の基本中の基本であり、人としての尊厳に深くかかわる大切な分野です。おむつ外し対策だけでなく、排泄ケア全体を見直すことで、より良い介護の環境を作ることができます。

失敗を責めない、成功を喜び合う姿勢

排泄にまつわる失敗は、誰にでも起こりうることです。「失敗してしまった」というご本人の気持ちを受け止め、「大丈夫ですよ」と温かい言葉かけを心がけましょう。逆に、うまくいった時は一緒に喜び、ご本人の自信につなげることが大切です。

自然な排泄を促すための工夫

介護では、おむつに頼りきらず、できるだけ自然な排泄を促すことも大切です。

たとえば、ベッドの端に座ったり、椅子に移るなど、できる範囲で姿勢を変えることで排泄が促されやすくなります。

決まった時間にトイレやポータブルトイレに誘導するのも良い方法です。ポータブルトイレの使用では、家庭内でも、カーテンやついたてで、プライベートな空間をつくると安心して排泄できる環境になります。

こうした小さな工夫の積み重ねが、本人の安心感や意欲につながり、結果として介護する側の負担も軽減されることにつながることがあります。家庭での排泄ケアは難しい面もあるので、ケアマネジャーや専門家にどのような方法があるか、サポートをお願いできるかなど相談してみましょう。

自然な排便を促す生活習慣

便秘は、排泄ケアを困難にする要因のひとつです。日常生活の中で、自然なお通じを促す工夫を取り入れてみましょう。

  • 水分摂取:十分な水分補給で便の硬化を防ぐ
  • 食物繊維:野菜や果物を意識した食事内容
  • 適度な運動:散歩や体操で腸の働きを活性化
  • 規則正しい生活:食事と排泄のリズムを整える

おむつ外し対策と自然な排泄の促進は、まさに両輪の関係にあります。一方だけでは効果が限定的ですが、両方を意識することで、より良い排泄ケアが実現できます。

おむつ補助金・助成金制度の活用

介護用品にかかる費用は、長期間にわたると大きな負担となります。しかし、公的な支援制度を活用することで、この負担を軽減することができます。

介護保険による給付

要介護認定を受けている方は、介護保険の特定福祉用具購入費として、おむつ代の一部を給付してもらえる場合があります。ケアマネジャーに相談してみましょう。

市町村独自の助成制度

多くの自治体では、独自のおむつ給付制度を設けています。たとえば、東京都江東区では要介護3以上(または診断による例外あり)を原則対象とし、月7,500円相当まで現物支給+特定ケースでは現金助成を実施しています。また、一部の自治体では、要介護度にかかわらず、必要性が認められた場合に給付を行うところもあります。

 

申請の手続き

申請には、以下のような書類が必要となることが一般的です。

  • 申請書:各自治体指定の様式

  • 医師の意見書:排泄障害の状態を示す書類
  • 介護認定証の写し:要介護度を証明する書類
  • 本人確認書類:身分証明書など

申請書類の提出先は、お住まいの市町村の介護保険課や高齢者支援課となります。不明な点があれば、直接担当窓口に相談してみましょう。

また、ポータブルトイレなどの福祉用具についても、介護保険の福祉用具貸与や購入費支給の対象となる場合があります。これらの制度も合わせて活用することで、総合的な負担軽減を図ることができます。

制度を上手に活用しながら、ご家族とご本人が共に安心して過ごせる環境を作っていくことが大切です。

高齢者のおむつ外しに寄り添うことで、お互いが安心できる介護へ

高齢者のおむつ外しは、確かに介護をするご家族にとって大きな悩みです。しかし、その行動の背景には、ご本人なりの理由と気持ちがあることを理解する必要があります。

排泄は、人間にとって最も基本的で、同時に最もプライベートな行為です。年齢を重ね、身体機能が低下しても、その人らしさや尊厳は決して失われることはありません。家族ができることは、ご本人の気持ちに寄り添いながら対策を講じ、より良い排泄ケアを提供することです。

おむつ選びや装着の工夫、温かいコミュニケーション、必要に応じた補助アイテムの活用、そして自然な排泄を促す生活習慣の見直し。これらすべてが組み合わさることで、ご本人の快適さと家族の安心を両立させることができるのではないでしょうか。

また、経済的な負担については、公的な支援制度を積極的に活用することで軽減を図ることができます。ひとりで悩まず、ケアマネジャーや自治体の担当者などに相談することで、より良い解決策が見つかるはずです。

介護は決してひとりで背負うものではありません。ご本人の尊厳を大切にしながら、家族の負担も軽減できるよう、利用できる支援やサービスを活用し、みんなで支え合っていくことが何より大切です。

ALSOK介護では、「排泄ケアラダー」「排泄ケアマイスター」といった専門資格を取得したスタッフがたくさんいます。こちらのブログもぜひご覧ください。

排泄ケアラダーによる「排泄ケアをするときの配慮」などがわかる(みんなの家 三橋6丁目介護ブログ)
https://kaigo.alsok.co.jp/blog/archives/114535

排泄マイスター認定証が届きました(グループホームみんなの家 与野大戸)
https://kaigo.alsok.co.jp/blog/archives/114010

参考:

排泄に介護を要する利用者への支援に関する手引き/公益社団法人全国老人福祉施設協議会
https://mitte-x-img.istsw.jp/roushikyo/file/attachment/304350/kata_haisetsu_20190522_2.pdf