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介護離職とは?原因や問題点、対策などを解説

総務省統計局によると、日本の総人口のうち65歳以上の割合は29.3%に達しており、国民の約3人に1人が高齢者です。

高齢化が進む中、家族の介護を理由に仕事を辞める「介護離職」が深刻な社会問題となっています。介護離職は、個人や家庭の生活に影響を与えるだけでなく、企業や社会全体にも課題を投げかけています。特に、現役世代が抱える「仕事と介護の両立」という問題は、避けて通れない現代の課題です。

本記事では、介護離職の定義や現状、その原因と問題点を解説するとともに、この課題を解決するための具体的な対策について詳しく考察していきます。

介護離職とは?現状と問題点

介護離職の定義と社会的背景

介護離職とは、家族の介護を理由に仕事を辞めることを指します。日本では急速に高齢化が進み、介護が必要な高齢者の数も増加しています。それに伴い、介護離職者の数も年々増えています。

介護離職の問題は個人や家庭だけでなく、企業や社会全体に深刻な影響を与えています。たとえば、働き盛りの世代が介護を理由に離職すると、家計収入の減少や将来的な年金額の減少に直結します。一方で、企業は人材の喪失により、生産性の低下や追加の採用・育成コストの負担を強いられます。

介護離職の現状

「令和4年就業構造基本調査」によれば、介護離職者は約10万6000人に上ります。さらに、介護をしながら働く有業者の割合は介護者全体の58.0%に達し、2017年と比較して増えています。特に、50~54歳の年代では、男性の88.5%、女性の71.8%が介護と仕事を両立している状況が明らかになっていて、この年代が特に介護の負担を多く抱えている世代であると考えられます。

家庭内での介護負担が増えている現実が、このような状況の背景にあると考えられます。たとえば、「同居する家族による介護」が必要な場合、通院の付き添いや身体介助などに多くの時間が必要で、働きながら対応するのは難しいでしょう。結果として仕事との両立ができず、やむを得ず離職を選ぶわけです。さらに、介護を理由に離職した後の再就職は簡単ではありません。特に中高年の場合、ブランクや年齢が障害となり、再びキャリアを築くのが難しいケースが多く見られます。

介護離職の背景

介護離職の背景には、「2025年問題」と呼ばれる高齢者人口の急増が関係しています。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで、要支援や要介護状態の高齢者の数が現在の約676.6万人からさらに増加すると予測されています。一方で、介護施設やサービスの供給が需要に追いついておらず、多くの家庭で家族が介護を担う状況が増えています。

介護離職のメリットとデメリット

メリット

介護離職には、いくつかの利点があります。まず、家族の介護に専念できるため、介護を行う側も安心感が得られ、家族との絆を深めることができます。介護者が家族の健康状態を常に把握することで、早急な対応が可能となり、結果、介護の質向上にもつながるでしょう。また、自宅での介護は、介護施設やサービスを利用するよりも費用が節約できる場合もあります。

デメリット

しかし、介護離職には深刻なデメリットも存在します。まず、収入が減少し、キャリアが中断されることが多いため、再就職が難しくなります。再就職できた場合も、以前のキャリアを活かすことが難しく、新しい職場に適応するまでに時間がかかることもあります。 さらに、長期間の介護は精神的・身体的に負担が大きく、社会的な孤立を招くことがあります。介護者の健康が損なわれるリスクもあり、最終的には二重の負担を抱えることになります。

介護離職を防ぐために企業が講じている対策

介護離職を防ぐために、企業や政府はさまざまな対策を講じています。たとえば、育児・介護休業法(※1)により、家族1人につき通算93日間の介護休業を取得できる制度や、必要に応じて短時間勤務や勤務時間変更が可能な介護休暇制度が整備されており、2025年4月には両立の支援を強化する改正も施行されます。また、多くの企業が介護相談窓口の設置や、介護に関する情報提供、従業員向けのセミナーの開催を行っています。

※1 育児介護休業法やその改正内容についてはについては、こちらの記事『介護休業法の改正で「仕事と介護の両立」は可能?わかりやすく解説』も併せてご覧ください。

企業の対策が直面する課題と解決策

一方で、これらの制度にはいくつかの課題が指摘されています。以下に、いくつかの事例を挙げます。厚生労働省の「令和3年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」によれば、介護と仕事の両立支援制度には以下の課題が指摘されています。

制度の未整備や利用要件の制約

一部の企業では介護休業や介護休暇が整備されておらず、利用できる従業員が限られています。また、制度利用の条件が厳しい場合、要件を満たせない労働者が利用を断念することもあります。

職場の雰囲気

制度が整備されていても、「職場の雰囲気や同僚の目線が気になる」という理由で利用をためらう労働者が少なくありません。

キャリアへの影響

介護休業や介護休暇を取得することで、昇進や評価への影響を懸念する声が多く、制度の利用を控えるケースも報告されています。

こうした課題を解消するためには、次のような取り組みが求められます。

柔軟な働き方の導入

テレワークやフレックスタイム制を積極的に導入することで、従業員が介護の状況に合わせて働き方を選択できる環境を整えることが重要です。

代替要員の確保

介護休業や介護休暇中の業務をカバーするために、他部署からの一時的なヘルプ体制を構築したり、外部リソースを活用したりする仕組みが必要です。

職場の意識改革

管理職を対象に、介護支援制度の重要性や活用方法に関する研修を行うことで、従業員が制度を気兼ねなく利用できる環境を作ります。また、社内でオープンなコミュニケーションを促進し、制度利用への理解を深める文化を醸成することも効果的です。

これらの取り組みによって、制度利用が進み、介護と仕事の両立が実現しやすくなることが期待されます。

ALSOK介護と専門家団体の連携

企業と外部団体が連携する取り組みも、介護離職防止に効果を発揮しています。

たとえば、日本顧問介護士協会は、福利厚生サービス契約企業の従業員向けに介護相談サービスの提供や関連セミナーの開催などを行っています。その中で介護サービスが必要と判断された際には、ALSOK介護など介護サービスを取り扱う提携企業が、直接ケアマネジャーを紹介するなど、具体的なサービス利用のアテンドをします。

これらの連携により、従業員は専門家のアドバイスを受けながら介護を進めることができ、離職のリスクが軽減されています。

介護と仕事を両立させるためにできること

介護と仕事を両立するためには、さまざまな支援策を上手に活用することが大切です。企業や地域のサポート、政府の制度を利用することで、介護の負担を軽減しながら仕事を続けることが可能です。以下に具体的な方法を紹介します。

介護休業といった制度を利用する

介護休業や介護休暇は、介護に専念する時間を確保できる制度です。これらを利用する際には、上司や同僚と事前にしっかりコミュニケーションを取り、理解を得ることが重要です。職場の協力体制が整えば、よりスムーズに仕事と介護を両立できます。

介護サービスを利用する

デイサービスや訪問介護など、多様な介護サービスを活用することで、介護負担を軽減しながら働くことができます。地域によってサービス内容が異なるため、自分や家族に合ったものを選びましょう。費用がかかるため、事前に予算を立て計画的に利用することも大切です。

コミュニティや地域の活用

地域包括支援センターやボランティア団体などの支援を受けることで、介護の負担を分担できます。また、地域の交流会や情報交換の場に参加すれば、介護に関する知識を深めたり精神的な支えを得たりすることも可能です。

まとめ

介護離職を防ぐためには、個人の努力だけでなく、企業や社会全体の支援が必要です。介護休業や地域支援を活用することはもちろん、最寄りの地域包括支援センターに相談し、利用できるサービスや制度を確認してみましょう。特に大切なのは、1人で抱え込まず、周囲の人や専門機関に相談することです。