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高齢者の薬の飲み忘れ、どう防ぐ?便利グッズ、見守りのヒントをご紹介

高齢のご家族が通院されている場合、「処方された通りに正しく薬を飲めているかしら?」と不安になることはありませんか。薬の飲み忘れは、症状の悪化や体調不良を招く可能性もあり、放っておけない問題です。

一方で、強く言いすぎると本人の反発を招き、関係がぎくしゃくしてしまうことも。本記事では、高齢者が薬を飲み忘れてしまう背景にある原因を整理し、すぐに実践できる具体的な対策や便利グッズもご紹介します。

高齢者が薬を飲み忘れてしまうのはなぜ?

対策を講じる前に、薬の飲み忘れは「本人に悪気があるわけではない」ことを理解しましょう。加齢や環境の変化により、誰にでも起こり得ることなのです。

認知機能・記憶力の変化

認知症と診断されていなくても、加齢により認知能力や記憶力は落ちます。そのため、「後で飲もう」と思った直後に別のことに気を取られ、失念してしまうことは誰にでも起こります。

薬の数が多いことによる混乱

複数の持病を抱えている場合、飲むタイミング(朝・昼・晩・寝る前)で服用する薬が増えがちです。錠剤の色や形が似ていると区別がつきにくくなり、どれを飲んだのか分からなくなることもあります。

身体的な負担と環境

膝や腰の痛みがあると、薬を取りに行くこと自体が負担になります。別の部屋に置いてある薬を取りに行くのが億劫になり、後回しにしてしまうこともあるでしょう。

また、一人暮らしでは生活リズムが乱れやすく、食事時間が一定でない場合があります。服薬を食後に設定していても、食事が不規則だと服薬のきっかけを失ってしまいます。周囲からの声かけがない環境では、確認の機会が少ないことも影響します。

注意したい「ポリファーマシー」の問題

薬の数と身体的な負担と関係して、薬の種類が増えると、組み合わせによる副作用や体への負担が問題になる「ポリファーマシー」という状態に陥る場合があります。

これは必ずしも薬の数が多いことが問題というわけではなく、多くの薬を服用することで有害な影響が生じる状態のことをいいます。特に複数の診療科を受診しているときは、処方内容が互いに影響を与えないか?それぞれの医師に確認をしましょう。対策のひとつとして、お薬手帳を一冊にまとめ、医師や薬剤師が処方内容を把握しやすくすることが有効です。

参考:厚生労働省 あなたのくすり いくつ飲んでいますか?

今すぐにできる3つの環境づくり

便利グッズを購入する前に、環境を見直しましょう。環境や服薬までの流れを少し変えるだけで、飲み忘れが改善することもあります。

薬剤師に相談して「一包化」してもらう

一包化とは、1回分の薬をすべて一つの袋にまとめてもらう方法です。袋に「朝食後」「〇月〇日」と印字してもらうことも可能です。かかりつけ薬局で「飲み忘れが多くて困っている」と相談してください。医師の指示により保険適用で対応してもらえるケースがあります。ただし、薬局によっては別途料金が発生する場合もあるので確認しましょう。

生活動線に薬を配置する

薬の保管場所に工夫をすると良いでしょう。頻繁に服薬するのに引き出しの奥にしまい込むと、取り出すのが億劫で、存在自体を忘れてしまいます。 食卓や洗面所など、「必ず立ち寄る場所」に置きます。ただし、お孫さんが遊びに来る際など、誤飲のリスクがある場合は安全な高さに配置する工夫が必要です。

「いつもの行動」と結びつけ、服薬を習慣化する

服薬を「8時」のように時間で覚えるのではなく、「歯みがきが終わったら」「朝のニュースが始まったら」といった、すでに習慣化している行動とセットにすることで記憶に残りやすくなり、服薬が生活の一部として定着しやすくなります。

飲み忘れを防ぐ便利なアイテム

本人の性格やライフスタイルに合わせて、アイテムを取り入れるのも有効です。最近では100円ショップや家電量販店などで、手頃な価格のアイテムが手に入ります。もちろん、無理に最新機器を導入する必要はありません。使いやすさを基準に選びましょう。

お薬カレンダー

定番なのが、お薬カレンダーです。壁掛け式で、日付や曜日ごとにポケットが分かれているタイプが一般的です。今日の分を飲んだかどうかがひと目で分かるため、視覚的に確認したい方に向いています。

ピルケース

外出の機会が多い方や、1日の服用回数が少ない方にはピルケースが便利です。1日分ずつ小分けにして持ち運べるため、カバンに入れておけば出先での飲み忘れを防げます。コンパクトなタイプや曜日ごとに分かれたタイプなど種類も豊富です。生活スタイルに合わせて選ぶことで、負担なく続けやすくなります。

服薬管理アプリ

スマートフォンの操作に慣れている方には、服薬管理アプリも選択肢の一つです。設定した時間にアラームで通知が届くため、時間を意識しやすくなります。服薬の記録を残せるアプリもあり、家族と共有できる機能があれば、離れて暮らしている場合は安心です。

スマートスピーカー

スマートフォン操作は苦手でも、声かけであればしやすいのではないでしょうか。設定した時間になると音声で「お薬の時間です」と知らせてくれるため、機械を操作しなくても自然に服薬を意識できます。

高齢者の自立を尊重する「見守り」のコツ

薬の管理は健康に直結するため家族は神経質になりがちです。とはいえ、過度に管理しようとすると、子ども扱いされていると感じさせてしまい、反発を招くことがあります。本人の自尊心を守りながら支えるためには、距離感や接し方に配慮が必要です。

「管理」ではなく「共有」する

「どうして飲まないの?」と責めるのではなく、「最近種類が増えて大変そうだね」と一緒に解決策を探す姿勢が、協力関係を築く鍵です。やらされるのは嫌なもの。本人が自発的に行動できる、服薬することを思い出すようなコミュニケーションが理想です。

本人の納得感を大切にする

お薬カレンダーの色や、ケースの形、大きさなど、細かな点でも本人が選ぶことには意味があります。自分で決めたという感覚があると、自分で管理しているという自負が生まれます。その積み重ねが継続につながるのです。家族が良いと思う方法を押し付けるのではなく、本人にとって使いやすいかどうかを基準に考えましょう。

専門家の力を借りる

家族だけで抱え込む必要はありません。ケアマネジャーや訪問看護、かかりつけ薬剤師などと連携し、第三者からの声かけを取り入れるのも有効です。家族からの指摘には反発しても、専門職からの説明には素直に耳を傾けることがあります。

もし飲み忘れてしまったら?NG行動と対処法

どれだけ対策をしても、飲み忘れをゼロにするのは困難です。飲み忘れゼロを目指しすぎると本人も家族も疲れるため、飲み忘れが起きたときにどう対応するかを、あらかじめ決めておくと良いでしょう。

2回分を一度に飲むのは厳禁

飲み忘れに気づいたとき、自己判断で2回分をまとめて飲むのは非常に危険です。薬によっては血中濃度が急激に上がり、副作用のリスクが高まることがあります。思わぬ体調不良や重篤な症状につながる可能性があるため、飲み忘れに気づいたら、まずは落ち着いて、次の服用時間との間隔を確認しましょう。必ず主治医や薬剤師に相談してください。

あらかじめルールを決めておくと良い

薬ごとに、飲み忘れた場合の対応は異なります。そのため、処方された時点で「飲み忘れたらどうすればよいか」を医師や薬剤師に確認しておくことが重要です。たとえば、「何時間以内であれば気づいた時点で飲んでよいのか」「次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばすべきか」といった具体的なルールを聞いておくと安心です。

まとめ

高齢者の薬の飲み忘れを防ぐのは、毎日のことだからこそ「完璧」を目指すと疲弊してしまいます。まずは一包化などの基本的な工夫から始め、本人が納得できる道具を一つ取り入れてみてください。そして何より、責めるのではなく寄り添う姿勢が、安全で安心な生活を守る一番の薬になります。